FORM TECH REVIEWvol27
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表1典型的なCFRP材料の物性値10)熱伝導率(W/m/K)蒸発/分解温度(K)0.2508003900蒸発熱(J/g)100043000削削除除ししなないいででくくだだささいい 炭素繊維強化プラスチック(CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastic)は軽量,高剛性,高耐力といった特徴を持つ複合材料として注目されており,幅広い産業分野で用いられている1).特に,自動車/航空機産業においては,車体/機体の軽量化による燃費の向上や排出ガスの抑制が実現している.CFRPの用途をさらに拡大するためには,炭素繊維の低コスト化と共に,素材へのダメージが少なく,高品質な加工が可能な技術の確立が重要となってきている.我々は,CFRPに対するパルスレーザー加工の適用可能性について研究を進めてきた2-9).CFRPのレーザー加工においては、加工速度の向上と共に熱影響を最小限に抑えることが求められ,加工品質の最適化のためには,レーザー波長,パルス幅への依存性を明らかにすることが重要となる.CFRPは炭素繊維とマトリックス樹脂から成る複合材料である.典型的な炭素繊維とマトリックス樹脂の物性値を表1に示す10).熱伝導率,蒸発/分解温度,蒸発熱,それぞれ樹脂と炭素繊維では1桁以上の差がある.炭素繊維に比べて樹脂の方がより低い温度で,より少ないエネルギーで蒸発(昇華)することが分かる.CFRPのレーザー加工における問題は,レーザー照射条件を樹脂に最適化すると炭素繊維が加工できない,炭素繊維に条件を合わせると樹脂に過剰な熱が加わるという点である.本稿では,これまで行ってきたCFRPのパルスレーザー加工実験結果を取りまとめ,レーザー波長,パルス幅への依存性を考察する.用いたレーザーの主な仕様を図1に示す.各枠内の上段に平均パワー,下段に繰り返し周波数を記入している.平均出力と繰り返し周波数は様々であるが,パルス幅は100fsから10 nsまで,波長は266nmから1064nmまでをカバーする範囲で微細加工の実験を行った.表2に図1で示すレーザーを用いて実験した際の代表的なパラメーターを示す11).レーザーパルの繰り返し周波数が1kHz程度の場合は,試料を直進ステージ上に固定し約20mm/sの低速掃引で加工を行った.繰り返し周波数写写真真位位置置 1.まえがき2.実験方法*レーザー技術総合研究所 レーザープロセス研究チーム 主席研究員3.実験結果樹脂炭素繊維図1CFRP加工に用いたレーザーのパルス幅と波長が10〜数100kHzの場合は,試料を高速モーター上に固定し1500mm/sの高速掃引で加工を行った.さらに,繰り返し周波数が1MHz以上の場合はガルバノスキャナを用いた.いずれの場合も大気中でアシストガス無しで切断加工を行った.試料の形態や厚みに関しては,参考文献11に示す.加工試料における熱影響は、試料表面/裏面の電子顕微鏡像(SEM像)において(樹脂だけが蒸発して)炭素繊維が露出した領域の大きさで定性的に評価した.図2に図1で示すレーザーを用いて加工した試料表面のSEM像の比較を示す.全てのSEM像は同じ倍率で示してある.大雑把な比較になるが,用いたレーザーのパルス幅が短く,波長が短いほど,熱影響が小さい(炭素繊維の露出領域が小さい)事が分かる.ここで注意したいのは樹脂に対するレーザー光の吸収率の影響である.図2(f)では、炭素繊維の露出は見られないが樹脂部がダメージを受けているように見受けられる.これは,波長532nmが樹脂を透過するためにCFRPM. Fujita- 89 -の微細加工技術の開発藤田 雅之*藤田雅之短パルスレーザーを用いた炭素繊維強化複合材炭素繊維強化複合材の微細加工技術の開発短パルスレーザーを用いたReview

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