FORM TECH REVIEWvol27
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図8 LIPSS形成や熱処理の有無が接合面積に及ぼす図6 銅棒側破断面の外観図9 LIPSS形成や熱処理の有無が接合強度に及ぼす図7 銅棒側破断面のSEM写真 5.おわりに 本研究では,銅箔と銅棒との常温接合において,被接合面へのLIPSSの形成が接合性に与える影響について検討した.まず表面活性化と接合実験を1つの容器中で実施可能な真空装置の製作を行った.また,フェムト秒レーザを用いて表面に幅700 nm,高さ150 nm程度のLIPSSを形成した銅棒と銅箔との常温接合実験を行った.接合試料を引張試験に供し,LIPSSの有無や熱処理が接合強度に与える影響を検討した.その結果,473K,2 hの熱処理により,接合強度が大きく向上することが分かった.その一方で,銅箔(紙面手前)の表面が剥がれたような破断形態が観察された.なお,今回の銅棒,銅箔の表面観察においては,それらの接合界面で破断したと思われる部位は観察されず,全て図7のような破断形態となっていた.そのため,銅箔と銅棒間の真実接触領域については,観察を行うことができなかった. 図8に,図6の各試料から計測した見かけの接合面積を示す.同図より,LIPSSの有無による試料間の違いはほとんど見られず,熱処理時間に比例して接合面積が増加していることが分かる.図9は,各接合試料の引張試験の結果と図8の見かけの接合面積から算出した引張強度である.なお,条件(a), (a)’, (b)’の試料については,接合強度が低く,強度測定が困難であったため,ここには記載していない.図9より,200 K程度の熱処理により,接合強度が大きく向上していることが分かった.また,図8と図9の(b)および(c)に着目すると,熱処理時間を2倍にすることによって接合面積が約2倍に増加する一方,接合強度は約5倍に増加している.このような接合部の強化は,前述のように熱処理による原子拡散の促進と,それに伴う内部残留応力の緩和に起因するものと考えられる. なお,今回の実験結果においては,LIPSSの有無の接合強度への影響は小さかった.その原因として,接合部の破断が銅箔の表面近傍で生じており(図7),銅棒と銅箔との界面強度が正確に測定できなかった点が挙げられる.今回の実験では,接合面間の接触を重視したため,片側の試料として銅箔を使用したが,今後は十分な面精度を有する銅棒同士の接合を行うことによって,正確な界面強度を把握する必要がある.影響影響- 82 -

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