図5 表面活性化常温接合装置の概要表2 表面処理および熱処理条件図4 LIPSS形成表面のAFM測定結果 4.実験結果と考察 まず,アルゴンイオンビーム照射後の試料に対して,AFMによる形状測定を行い,ビーム照射がLIPSS形状に与える影響を調査した.その結果,周期は700 nmと照射前と変化はなかった一方,イオンビームのスパッタリング効果により,高さが120 nmと約30 nm減少していた. 図6に,各接合条件における銅棒側の破断面の代表的な外観写真を示す.同図から分かるように,熱処理を行わなかった試料(a),(a)’については,LIPSSの有無にかかわらず,明瞭な接合部は観察されなかった.一方,熱処理を行t=×−5×成されている.本装置の最高到達圧力は1.0×10-6Paである.文献9)によれば,清浄な表面上に気体の単分子層が形成されるまでの時間tは表面の気体補足率を最大値の1と仮定した場合,次式で表される.ここで,M:分子量,T:温度(K),P:圧力(Pa),r:分子半径(Å)である.温度を300Kとし,酸素分子を例としてtを求めると,1.0×10-6Paにおいては,活性化状態の接合面を約130 s間保つことが可能であると考えられる.なお,本接合装置において,接合圧力は約2~15 MPaに制御可能である.上述の接合装置と,被接合面へLIPSSを形成した試料を用いて常温接合実験を行った.実験装置を1.0×10-6Paまで排気後,超高純度アルゴンガスを8.6×10-3Paまで導入し,装置左右の治具に設置した被接合面(鏡面研磨した銅棒と銅箔)に対して,照射時間1 h,加速電圧2.0 kV,照射角度45 deg.の条件でアルゴンイオンビーム照射を行った.その後,活性面に酸化膜等が再付着すると考えられる約130 s以内に,活性化面が重なるように試料を移動・回転し,上から接合治具によって10 MPaの圧力を負荷し常温で接合を行った.また,常温で接合した試料の他に,これを熱処理した試料を作製した.これらの試料を引張試験に供するとともに,SEMによる破断面の観察を行った.また,得られた接合面積・接合強度に対し,接合面のLIPSSの有無や熱処理の効果について比較・考察した.試料表面条件,熱処理条件を表2に示す.った試料については,銅棒表面に存在する僅かなうねりや,接合ツールの面精度の不足により,試料全面での接合は困難であったものの,部分的には接合が達成されていた.熱処理前には明確な接合部が見られなかったにもかかわらず,熱処理後には接合部が形成されていることから,熱処理前の試料では清浄な面同士が密着してはいるものの,十分な強度を有した接合部は形成されておらず,熱処理に伴う原子拡散の促進と界面での残留応力の緩和3)により,強固な接合部が形成されたことが示唆される.図7は,図4中の(b)および(b)’の破断面のSEM観察像である.図7から分かるように,破断部にLIPSSの有無による違いは認められず,いずれにおいても銅棒(紙面奥)に接合された20.110MT2Pr (7)- 81 -
元のページ ../index.html#83