2つの弾性体間の接触問題はHertzによって解かれた6).半径R1,R2の2つの球体に荷重Fが負荷された場合の接触半径a0は,式(1)で与えられる.30=ここで,E1,E2は球1,球2のヤング率,ν1,ν2は球1,球2のポアソン比である.その後,Johnsonらは,凝着エネルギー∆γ(表面と界面とのエネルギー差)を考慮した理論(JKR理論と呼ばれる)を提案し,Hertzの解を式(4)のように修正した7).Rγπ3∆+Rγπ)a1+222=R=123a=F+6−+1221K図1削削除除ししなないいででくくだだささいい 近年,電子デバイスの高機能・高密度化が進んでおり,その実装工程における各種素子等への負担を軽減するため,低温・低荷重で実施可能な固相接合方法の確立が求められている.しかしながら,低温・低荷重条件下では金属表面の酸化被膜や汚染層の破壊・除去が容易ではなく,一般的な固相接合方法によって,被接合材の新生面を露出させ,直接的な金属結合を形成することは困難である.そのため,例えば小山ら1)は,接合前に銅をギ酸等の溶液中で煮沸処理を行うことで接合可能温度の低下や接合強度の向上を図っている.また,高真空中で試料表面の汚染層を除去し活性化させることで,接合温度の低下を図り,常温での接合を可能とする試みも広く行われている2).しかし常温においては,金属の変形能が低く,また接合界面における原子の拡散が起こりにくいことから,十分な接合面積・強度が得られないこと問題となる.一方,筆者ら3),高橋ら4)はこれまで,アルゴンイオンビームによって表面活性化させた金の細径ワイヤと金箔の常温接合において,ワイヤ径が微細になるにつれて,凝着力の影響が顕著になり接合率が上昇すること,また接合界面における原子の拡散が促進され,接合強度が上昇することを明らかにしている.したがって,あらかじめ接合面全体に微細な凹凸を形成することが可能となれば,常温付近の比較的低温環境下においても接合面積の増加や接合強度の向上が期待できる.本研究では,このような接合面への微細構造の形成をレーザ照射によって実現する.これまでの研究により,被加工材に対して,パルス幅がフェムト秒やピコ秒の超短パルスレーザ光を加工閾値近傍のエネルギー密度で照射した場合,入射光の偏光方向と垂直の方向に,レーザ波長と同程度,またはそれ以下の周期を有する構造が形成されることが知られている5).この構造は,レーザ誘起表面微細周期構造(Laser-Induced Periodical Surface nano-Structure: LIPSS)として知られており,接合面に対して比較的容易に,溝幅,溝深さがそれぞれ数百nmの微細凹凸を形成可能である.本稿では,このような微細周期構造を有する銅表面に対し,高真空中でのアルゴンイオンビーム照射による表面活性化を行い,2つの表面間の常温接合性を調査した結果について報告する.写写真真位位置置 1.はじめに*千葉大学大学院工学研究院 機械工学コース 准教授2.微細周期構造が接合性に与える影響ここで,aは凝着領域の半径,γ1,γ2は球1および2の表面エネルギー,γ12は凝着時の界面エネルギーである.一般的に∆γ>0であるため,JKR理論から計算される接触面積は,Hertzの理論から計算される接触面積に比べて大きくなる(図1).ただし,力の釣り合いを保つために面γπ∆ν−2Eν−1E1RR12RR+1Hertz理論とJKR理論による接触面積の差異RF(3∆+(4)(5)FR3K4R3K4γγγγ=∆12(1)(2)(3)S. Matsusaka- 79 -レーザ誘起表面微細周期構造を有するレーザ誘起表面微細周期構造を有する金属材料の常温接合特性金属材料の常温接合特性松坂 壮太*松坂壮太Review
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