FORM TECH REVIEWvol27
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率確壊破積累率確壊破積累図11作製した試料の超音波顕微鏡による界面の密着性評価とせん断強度のワイブルプロット図9と図10の結果を比較すると,加熱時のAr雰囲気中の残留酸素のppmオーダーの違いが,レーザを熱源とした短時間加熱においてもろう材の酸化挙動に大きく影響することが分かった.過去の研究事例では,Ar雰囲気中)%()%(間にはすき間が発生している.この表面は,ろう材溶融時にチャンバー内部の残留酸素を含むArに接している部分である.b)から,酸素の分布は樹脂成分の領域にのみ見られ,ろう材表面には明瞭な酸化は確認できなかった.これは,上述のように冷間硬化樹脂とろう材の間にすき間があることからも裏付けられる.c)とf)に示されるAgとCuはろう材の主成分を構成しており,共晶組織として分布していた.e)に示されるNはh–BNの領域に分布していた.d)に示されるTiのほとんどは,h–BNとAg–Cu–Tiろう材界面に分布しており,同界面にてNと分布が重なっていることが確認された.これは,レーザブレージング中にTi–Nの反応層が形成されたことを示す21).反応に寄与しなかったTiについては,d)とf)の分布のようにろう材母相中のCuと反応し,Cu–Tiの金属間化合物として分布しているものと推察される16).また,b)及びd)の分布からは,TiとOの分布に重なりは確認されなかった.このことから,予備排気なし・Arガス流量10 L/minにて作製された試料のろう材表面における酸化層の存在は確認されないことが明らかとなった.(A) Arガス流量5L/min・予備排気あり(B) Arガス流量10L/min・予備排気なしh–BN/Ag–Cu–Tiろう材界面の断面観察・面分析結果を示す.この試料を作製した際の残留酸素濃度は3.8 ppmである.a)はSEM像,b)~f)はそれぞれO, Ag, Ti, NおよびCuの各元素のEPMA元素分析結果である.a)の左上がh–BN,下部の白色を呈している部分がAg–Cu–Tiろう材である.冷間硬化樹脂硬化の際に発生した収縮により,ろう材とのろろうう材材ろろうう材材の残留酸素濃度が3 ppmの条件下で長時間加熱を行った場合,ろう材の酸化による重量増が確認されたとの報告がある22).今回の場合,残留酸素濃度が3.8 ppmの場合でもろう材の酸化は確認できなかった.この違いは,ろう材の酸化が顕著に進行する高温に曝される時間の違いによるものと考えられる.レーザブレージングの場合,ろう材の溶融温度以上に加熱されるのは数秒程度に限定されるため,数ppm程度の残留酸素濃度では,ろう材中に含まれるTiの酸化がほとんど進行しないことに起因すると推察される.これまでの結果を踏まえ,最も残留酸素濃度の低い条件である,(A)予備排気あり・Arガス流量5 L/minと,予備排気を行わないグループの中で最も残留酸素濃度の低い条件となった,(B)予備排気なし・Arガス流量10 L/minの2条件について,超音波顕微鏡による界面の密着性評価を行うと共に,それぞれの条件におけるせん断強度測定を行った.結果を図11に示す.a), d)が試料外観,b), e)が超音波顕微鏡観察結果,c), f)がせん断強度のワイブルプロットである.b), e)の中央黒色部が,溶融したAg–Cu–Tiろう材である.(A), (B)いずれの条件においても,接合界面に大きな欠陥は見られなかった17).せん断試験を実施したところ,いずれの試料も接合界面に近いh–BN側で破断が発生した.せん断強度のワイブルプロットは,(A), (B)いずれの条件でも直線的な分布を示しており,単一の破壊モードを示すことが推察される.平均せん断強度μ は(A)が6.5 MPa,(B)が8.0 MPaであった.セラミックスとして用いたh–BN自体の強度ばらつきがあること15)を考慮すると,得られたせん断強度の差は,ばらつきの範囲内であると考えられる.a)h–BNWC–Cod)h–BNWC–Cob)Ag–Cu–Ti2mm(A)5L/min 予備排気ありe)Ag–Cu–Ti(B) 10L/min 予備排気なしc)f)せん断強度(MPa)せん断強度(MPa)- 77 -

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