図7に,加熱前のチャンバー内酸素濃度測定結果を示す.図6に加熱の際の代表的な超硬合金裏面温度プロファイルを示す.温度上昇は,1辺目の加熱開始時から4辺目図7 チャンバー内酸素濃度測定結果 図6 レーザ加熱中の超硬合金基板裏側の作製した試料について,外観観察ならびにEPMA(日本電子株式会社製 JXA-8230)による断面の元素分析を行った.断面観察用のため,試料の一部を低速ダイヤモンド切断砥石で水冷しながら切断し,冷間硬化樹脂に埋込後,エメリー紙#120~#800による研磨加工を施し,最終的に1 μmダイヤモンド粒子を用いてバフ研磨加工を行い,観察用試料を作製した.接合界面の密着性評価には,超音波顕微鏡(日立建機ファインテック株式会社製 HSAM220)を用い,せん断強度測定には,材料試験機(株式会社島津製作所製 AGS-5kNB)を用いた.接合面積によるせん断強度への影響を防ぐため,せん断試験で得られた応力値を上述の超音波顕微鏡を用いて測定した接合部面積で割った値をせん断強度とした. 3.実験結果及び考察 温度プロファイル の加熱終了時までほぼ一定の傾きで上昇した.予備排気あり・Ar流量 5 L/minの場合,加熱終了時の最高温度は約970Kである.この値は熱電対での基板裏面の測定温度であるため,実際の基板上面の温度は一次元の温度近似を行った場合,150~200K高いものと考えられ,溶融状況からもろう材の溶融温度(1063K)を上回っていることを確認している.予備排気なし・Arガス流量10 L/minの場合,ガス流量の増加による試料冷却効果の影響で最高温度は約70 K程度低くなっているものの,同じくろう材の溶融を確認した.すなわち,最もガス流量が多い条件においても十分に加熱が可能であることを確認できた.予備排気なし・Arガス流量1L/minの場合,ガス流量が少ないことに起因して試料冷却効果が減少することから,基板裏面の最高温度は1,000K程度となった.いずれの条件においても,基板上面温度はろう材の使用温度範囲内となっており,極端な過昇温とはなっていない. 冷却速度に関しては,加熱終了後25秒ほどで673 Kにまで温度が低下し,加熱終了後110秒で400 K以下まで冷却された.したがって,加熱の際に試料が高温に曝される時間は,従来の炉中ろう付(数十分~1時間)と比較して非常に短時間となっている. いずれの条件においても,時間経過と共に酸素濃度は低減した.この低減傾向はガス置換によるタンク内ガス濃度分布モデル18) と同様の傾向を示した.Arガス流量が1 L/min~3 L/minの場合,バルブ操作等に起因するバラツキ要因の影響が考えられるガスフロー直後を除き,100秒経過後はほぼ同様の酸素濃度低減傾向を示した.一方,Arガス流量が4 L/min~10 L/minの場合,酸素濃度はガス流量の増加と共に低減傾向を示した.これらの結果から,酸素濃度の低減には,ガス流量による閾値が存在することが分かる.この閾値には,残留酸素の吸着に影響すると考えられ99.999 %(5N)のArガスを置換するサイクルを3回繰り返した後,Arガスをフローさせてレーザブレージングを行った場合(1条件)の,計7条件を用いた.なお,チャンバー内容積は145 mLとコンパクトなものである.レーザ光は透明石英ガラス板を通して超硬合金基板に対して85°の角度で照射し,チャンバーを載せたX–Yステージを駆動することによりh–BNの周囲を一周するように行った.なお,レーザ光のデフォーカス径は1.63 mm (w(z) = 1.63 mm (1/e2))とした.酸素濃度については,チャンバーからの流出ガスを低濃度ジルコニア式酸素濃度計(横河電機株式会社製 OX400)により測定した.測定に際しては,酸素濃度計の仕様上,チャンバー内の圧力が大気圧に到達した時点から測定を開始した. 2.2 作製試料の評価 レーザブレージングまでの保持時間 - 75 -
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