FORM TECH REVIEWvol27
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図2活性ろう付法におけるTi酸化の要因図1活性ろう付法の模式図削削除除ししなないいででくくだだささいい セラミックスは,一般的に高融点で硬い特徴を有し,様々な分野に用いられている1).従来から多用されてきた構造材料や電子部品用途に加え,近年では,ハイブリッド車や電気自動車のモータ駆動用インバータなどのパワー半導体用材料としてSiCの利用も進んでいる2).さらに,ダイヤモンドを半導体デバイスとして用いる研究も盛んに進められている3).このように,構造用材料に限らず電子デバイスとしても魅力的な性質を示すセラミックスを,機械的性質や靭性,加工性に優れた金属材料と接合・一体化することで,その特徴を活かしつつ,それぞれの素材が単一材料では実現できないような優れた特性をもつ高機能部材の作製が可能となる4, 5).一方,セラミックスと金属は,脆性・延性や熱膨張係数,電気伝導性等の性質が大きく異なるため,その接合は大変困難である.例えば,その融点の高さから溶接の適用は困難であり,機械的締結も広範囲への適用は実現できていない.焼き嵌めや鋳ぐるみ等の手法もあるものの,適用形状には制限が生じる.このようなセラミックスと金属の接合方法としては,一般にろう付が多用されている.ろう付(ブレージング)法は,接合する部材(母材)よりも融点の低い合金(ろう)を溶かして接合材として用いることにより,母材を溶融することなく,複数の部材を接合させる方法である.この技術は,他の方法では接合困難な材料や形状に適し,機械的締結よりも高精度な接合が可能である.ろう付を用いてセラミックスと金属を接合するには,金属とのぬれ性の悪いセラミックス表面を改質する必要がある6, 7).そこで,セラミックス表面をメタライズにより予め改質し,ぬれ性を改善した後,大気中で使用可能な金属ろう材を使用する場合が多い.ところが,この方法では工程が複雑となり,製造コスト増加が問題となっている.写写真真位位置置 1.まえがき*鹿児島県工業技術センター 生産技術部 主任研究員加熱中にこの界面を表面改質一方,図1に示す活性ろう付法では,Ti等の活性金属を添加したろう材(活性金属ろう材)を用いることで,ろう付と表面改質(TiN, TiCなどの生成)を同時に行うことができ,メタライズ工程の省略が可能となる8).一方,この高い活性故に接合時に存在する酸素との反応も進みやすい.このような活性金属成分は,酸化物の標準生成自由エネルギー・温度図に見られるように融点付近における酸素分圧が10-23Paと非常に低い場合でも酸化が進行し,その制御は一般に困難である9).図2にTiの酸化要因の模式図を示す.このうち,温度についてはろう材の溶融に融点以上の温度が必要となることから,制御因子としては,酸素濃度と高温に曝される時間が挙げられる.従来法では,Tiの酸化抑制に10-3Pa程度の高真空炉や還元雰囲気炉中での加熱が必要である.特に酸化に弱いダイヤモンドなどの場合,前述のような真空炉の使用において,長時間の加熱に曝されることによる材質の劣化(黒鉛化)が懸念される.また,厚膜の界面反応層が形成されることによる接合強度の低下や,セラミックスと金属の熱膨張係数の差に起因する大きな残留応力およびこれらに起因する割れの発生などの問題が顕著となる.そこで,もう一つの大きな要因である加熱時間を短くできるろう付プロセスの開発が必要とされている.レーザブレージングは,集中熱源であるレーザビームを加熱源として接合する技術で,乗用車のルーフ部分やトランクリッド部といった金属同士の接合に実用化されている10).従来法である大型炉での長時間加熱による炉中ろう付法11)と比較して,局所的な短時間加熱12-14)を実現でき,長時間の加熱によって劣化する母材に対するろう付適用が可能となる特徴を持ち,ろう付プロセスの高度化を実現できる.Y. Sechi- 73 -金属/セラミックスの異材レーザブレージングに瀬知 啓久*瀬知啓久金属/セラミックスの異材レーザブレージングにおけるおける活性金属ろう材酸化挙動の解明活性金属ろう材酸化挙動の解明Review

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