FORM TECH REVIEWvol27
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図6 グラフェンのエネルギーバンド構造 図9 Fe:ZnSe Qスイッチ中赤外ファイバレーザ 図7 グラフェンQスイッチ中赤外ファイバレーザ 図10 レーザパルス波形 図8 レーザパルス波形 4.2 Fe:ZnSeを用いたQスイッチ発振 Fe2+添加ZnSe結晶は3 μm付近の波長域に強い吸収を有するため、過飽和吸収体として用いることができる。これまでに,同結晶を過飽和吸収体として用いた比較的低出力な3 μm帯ファイバレーザの受動Qスイッチ発振が報告されている[5‒7].本研究では,熱損傷閾値の高いFe2+添加ZnSeに着目し,高パルスエネルギー化と高平均出力化を目的として受動Qスイッチ中赤外ファイバレーザの開発を行った. ファイバレーザ発振器の概略図を図9に示す.レーザ媒質としてコア直径19 μm,第一クラッド直径180 μm (D型),ErF3ドープ濃度6 mol%,ファイバ長1 mのEr添加ZBLANファイバを使用し,これを波長978 nmのLDで励起した.共振器は垂直研磨されたファイバ端面のフレネル反射と銀ミラーにより構成される.この共振器内にFe2+添加ZnSeを挿入し,Qスイッチ発振させた.出力光の時間波形をInAs検出器とオシロスコープで測定したところ,図10のようなパルス列が得られた.励起入力7.5 Wにおいて,平均出力570 mW,パルス幅324 ns,パルスエネルギー4.9 μJ,繰り返し周波数116.3 kHzのパルスを得た. 本実験では使用した励起光源の最大出力によりレーザ出力が制限されたが,より高出力な励起光源を用いることにより高出力化が図れることが期待される. 有するため(図6)、波長依存性のない平坦な吸収スペクトルを示す.そのため、広い波長域において可飽和吸収性を有することが知られている[4].本研究ではグラフェンをEr添加ZBLANファイバレーザの共振器内へ挿入し,グラフェンによる波長2.8 μmにおける受動Qスイッチ発振の動作実証を行った. 装置の概略図を図7に示す.Erドープ濃度6 mol%,コア径19 μm,第一クラッド径180 μm(D型)のシングルモードZBLANファイバを増幅媒質として用い,ファイバ結合型LD(975 nm)を用いて片端面からクラッド励起される.多層グラフェン膜を表面に転写した誘電体多層膜ミラーをファブリペーロー共振器の片端に配置しQスイッチ発振を行った.平均出力380 mWにおける出力パルス波形を図8に示す.このとき,繰り返し周波数は59 kHz,パルス幅は約400 nsであった.パルス当りのエネルギーは6.4 μm,ピークパワーはおよそ16 Wであった. - 62 -

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