FORM TECH REVIEWvol27
54/100

Wm( rewop tuptuO )0 0Launched pump power (mW)効率は70%に達した.これは,コア径の大きな光ファイバー増幅器を使用したため,ドーナツ状の強度分布を持つ径偏光ビームに対しても十分な利得があるためと考えられる.また,出力光のスペクトルには,種光と同じ1064nmの強いピークのみが観測され,ASEは十分に抑圧されていることが分かった3). 最近では,光ファイバーの複屈折に起因する偏光分布の低下に対して,種光の偏光分布を制御することによって出力光の偏光分布を補償する試みを行っている.種光出力1.5Wにおいて,出力74Wの励起光光源を用いた増幅実験を行い,増幅光として49Wを得た.径偏光度は86%と種光に比べるとやや低下しているものの,ビーム品質(M2)は2.4と,理論値である2.0に近い値が得られている. 4.1 原理と実験方法 ロッドタイプのNd:YAGレーザーは加工用レーザーとして広い分野で利用されているが,ロッド中の熱分布に起因するdepolarizationによってレーザー光の偏光分布を乱してしまい,出力の飽和あるいは低下をもたらすことが知られている.これに対して,径偏光あるいは方位偏光ビームは,偏光分布が円筒対称であるために,ロッド中で発生する熱複屈折の影響をほとんど受けることがないため,高出力化および高品質化に大きな効果があると予想されている.本研究では,この熱複屈折光を積極的に利用して径あるいは方位偏光ビームを発生させることを試みた.ロッド中に円筒対称な熱複屈折が発生すると,常光線と異常光線では屈折率が異なる.ここでさらに熱レンズ効果が加わると,ロッド中での常光線と異常光線の光路が異なるため,光共振器の安定境界付近では,一方の偏光成分だけが安定になることがある.異常光線は径偏光ビームに対応しているため,異常光線だけが安定になるような光共振器を設計すれば,自動的に径偏光ビームだけが発振することになる. 実験においてはレーザー媒質として,LD側面励起のNd:YAGロッドを使用した.リアミラー (RM) には,高反射率の平面ミラーを用い,出力ミラー (OC) は平面ミラー (R = 90%) とした.ロッドの中心からOCおよびRMまでの距離を,それぞれdOC = 130 ~ 600 mmおよびdRM = 70 ~ 1000 mmの範囲で変化させた.熱レンズ効果の焦点距離fは,ロッドにTM01およびTE01モードのLDビーム ( = 780 nm) を入射して測定した. 4.2 結果と考察 Fig. 6に,dOC = 600 mmとし,dRMを70から1000 mmまで変化させたときのレーザー出力・発振特性を示す.dRM = 70 mmでは,駆動電流 (I) の増加とともに出力パワーが増大したが,I = 17 Aで発振が停止した (Fig. 6(a)).発振停止の直前ではTE01モード(方位偏光)発振が認められた.RMをロッドから遠ざけると (dRM = 200 mm),発振停止後に再発振する領域が現れた (Fig. 6(b)).dRMを増加させると再発振電流値は低下し,再発振後にはTM01モード(径偏光)発振が認められた (Fig. 6(c)-(f), 内挿図).対称共振器構成 (dRM = 600 mm) では,発振が中断する領域は認められなかった (Fig. 6(g)).dRMを対称共振器位置からさらに増加させると,今度は発振が中断する電流値が減少する傾向に転じた (Fig. 6(i)-(k)).いずれの構成でも,発振停止前にはTE01モード発振が,再発振後にはTM01100080060040020050010001500200025003000Fig. 3 Ybドープ光ファイバー伝(a)横断面強度分布および(b)-(d)直線偏光板透過後の強度分布.矢印は直線偏光板の向きを示す. Fig. 4 増幅された径偏光ビームの遠視野での(a)横断面強度分布および(b)-(d)直線偏光板透過後の強度分布.矢印は直線偏光板の向きを示す. 1200Fig. 5 励起光出力に対する径偏光ビーム出力.種光の径偏光ビーム出力は160 mW. 4.熱効果を利用したベクトルビームの直接発生4) (a) (c) (a) (c) (b) (d) (b) (d) - 52 -

元のページ  ../index.html#54

このブックを見る