3.光ファイバーによる径偏光ビームの増幅トルビームには,Fig. 1に示したビームの他に,多重リングを持つ径および方位偏光ビームや,花びら状の強度分布と偏光方向が方位方向に複数回回転するビームも知られている.3.1実験装置の概要Fig. 2に径偏光レーザー増幅器の概略図を示す.増幅のための種光として用いる径偏光ビームは,われわれが提案・実証した,複屈折性を有するc軸カットNd: YVO4レーザー共振器を用いて発生させた.レンズを用いて径偏光ビームをYbドープダブルクラッドファイバーに導入し,ファイバーからの出射ビームを観測した.波長1064 nmのレーザー光に対して,基本径偏光ビームに対応するLP11モードが伝播するように,コア径が15 mの光ファイバーを選択して使用した.ふたつのクラッドを持つ光ファイバーの内側のクラッドに励起レーザー光を導入することで,Ybがドープされたコアの部分を励起し,径偏光ビームの増幅を行った.励起光にはファイバー結合型半導体レーザーを使用し,精密に温度を調整することによって,発振波長をYbの吸収ピークである975 nmに同調した.光ファイバー出口から射出した,増幅された径偏光ビーム(1064 nm)と励起光(975 nm)を分離するために,ダイクロイックミラーを使用した.レーザービームの強度プロファイルはCCDにより計測した.3.2実験結果2)ー伝播後も径偏光ビームが保たれていることが確認された.また,ファイバー結合効率はおよそ50%であった.Fig. 4に,半導体レーザー光(出力2780mW)を光ファFig. 3に,c軸カットのNd: YVO4レーザーから発生した出力160 mWの径偏光ビームのみをYbドープ光ファイバーを伝播させた後の,遠視野での(a)出力ビームの横断面強度分布及び(b)-(d)直線偏光板透過後の強度分布を示す.図(a)より,光ファイバー伝播後も中心に穴の開いた強度分布であること,また図(b)-(d)より,ビームの偏光分布が放射状であることが分かる.これらより,光ファイバFig. 2径偏光レーザー増幅器イバーに導入して増幅した場合の,遠視野での(a)出力ビームの横断面強度分布,及び(b)-(d)直線偏光板透過後の強度分布を示す.得られた強度および偏光分布はFig. 3とほとんど同じであって,増幅後も出射ビームの偏光および強度分布が維持されていることが分かる.このスロープ効率は,一般に行なわれている直線偏光のガウスビームを種光として用いたファイバー増幅の結果(73%)に比べると低い値であった.この理由として,径偏光ビームがドーナツ状の強度分布であるのに対し,光ファイバーコアでの利得分布がほぼ均一であることに起因していると考えられる.事実,種光の出力が小さい場合には,ガウス型の強度分布と広いスペクトルを持つASEが強く発生することが確認された.しかしながら,種光出力が160mWの場合,ASEは観測されなかった.3.3出力アップ上記において、ダブルクラッド光ファイバー増幅器を用いることによって,ベクトルビームの増幅が可能であることが実証されたので,この結果を踏まえ,より高出力な径偏光ビームの増幅を試みた.まず,種光として半導体レーザー励起のNd:YAGレーザーからの径偏光ビームを使用した.このレーザー共振器には,径偏光に対する反射率が高いフォトニック結晶ミラーを使用しており,通常のミラーと交換するだけで径偏光ビームが得られる.この出力は1Wと大きいほか,そのビーム品質も高く,径偏光の純度として95%程度が得られている.このビームを,コア径が30mのYbドープ光ファイバー増幅器に入力し,波長975nmの半導体レーザーで励起した.増幅された光の偏光分布を測定したところ,Fig.4と同様なパターンが観測され,径偏光であることが確認された.また,励起光出力が30Wのとき,増幅光の出力は21Wであり,そのスロープFig. 5に,種光の出力が160 mWの場合の,励起光出力に対する増幅されたビームの出力を示す.図より,励起光出力が2780 mWの場合,光ファイバー内での増幅作用により出力1060 mWの径偏光ビームが得られていることが分かる.この時の増幅率は6.6倍,スロープ効率は約42%と求められた.CCD camera- 51 -Pump, 975 nmDichroicmirrorSeed (c-cut Nd:YVO4), 1064nmYb-doped double clad fiberDichroic mirror
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