1)四宮徳章,白川信彦,中本貴之:日本機械学会論文集4)玉井良清,山崎雄司,吉武明英,井村隆昭:塑性と加5)山下裕之,上野宏明,中井浩之,檜垣貴大:Honda R&D 謝■辞■参考文献 径の差を小さくすることができた.また同図(b)に示した解析結果においても,内径・外径に及ぼすスライドモーションの影響は実験結果に近い傾向を示し,減速モーションでは,高さ方向の直径の差が小さいことを確認できた. ■■ ■ ■成形中の素材温度と寸法精度の考察■内径寸法および外径寸法は成形中の素材温度によって大きく影響を受けると考え,成形中に最も素材温度が高くなると考えられるパンチ肩近傍の素材温度の推移を,解析により調べた.結果を図12に示す.図より,スライド速度が100%と高い場合は素材温度の上昇が大きく,最高で約140℃に達することがわかる.一方,スライド速度が20%と低い場合は,最高温度が85℃程度であった.これは,スライド速度が低速の場合,加工により発生した熱が金型へ多く移動するためと考えられる.また,減速モーションでは,成形初期に素材温度が上昇した後,成形中期以降で素材の昇温が抑制された.特に,下死点上5mmの減速モーションでは,下死点上3mm以降の素材温度が80~85℃程度でほぼ一定であった.一方,停止モーションでは,スライド停止の下死点上4mmまでに素材温度の上昇がほとんどないため,素材温度の低下に対する効果は小さかった.また,再起動後は素材の温度が急激に上昇し,100%一定モーションとほぼ同程度の約140℃にまで達した. 次に,成形品側壁部の各部位が成形中パンチ肩近傍を通過する際の温度を図13に示す.図より,100%一定モーションや停止モーションでは,成形品底部に近いほど成形時の温度がきわめて高く,熱収縮により寸法が小さくなると考えられる.一方で,下死点上5mmの減速モーションは,各高さの成形温度が約80℃で一定であり,成形高さごとの熱膨張,熱収縮の差が小さいと考えられる.これらは,図11に示した内径と同様の傾向を示し,成形途中のスライドの減速は,素材温度の適切な制御を可能にするため,成形品高さ方向の直径の差を小さくできることがわかった. 7.おわりに■SUS304,TW340の圧縮試験では,金型材料や加工速度を検討した結果,金型材料にZrO2を用いることで荷重を低減できた.また,SUS304の円筒深絞り加工では,金型材料にZrO2あるいは素材に保護フィルムを貼付することで成形中の素材温度を大きく上昇でき,加工誘起変態を抑えることができた.SUS304の角筒絞り加工では,スライドモーション制御を活用して,スライドの減速あるいは一時(A編),77-779(2011),1051-1055. 2) 四宮徳章,白川信彦,中本貴之:第63回塑性加工連合3) 四宮徳章,白川信彦:日本機械学会論文集(A編),79-804(2013),1107-1111. Technical Review,24-1(2012),142-148. 加工時の発熱を素材の昇温に利用すること,および,金型への伝熱を制御することで,成形荷重の低減や寸法精度の向上が可能であるか検討した. 停止することで成形性が向上できた.また,衝撃押出し成形では,スライドを減速することで素材温度の調整を行うことができ,その結果,成形品の寸法精度を高めることができた. 本研究は,公益財団法人天田財団からの一般研究助成により実施した研究に基づいていることを付記するとともに,同財団に感謝いたします. 講演会,(2012),137-138. 工,51-592(2010),450-454. - 44 -
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