FORM TECH REVIEWvol27
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の温度は加工誘起変態に大きく影響を及ぼすことから,加工時の発熱も影響を及ぼすものと考えられる.そこで,成形品の残留オーステナイト量を調べることで,加工発熱が加工誘起変態に及ぼす影響を調べた.図6に成形品側壁の残留オーステナイト量を示す.成形品高さの高い位置(端部に近い位置)ほど残留オーステナイト量は少なく,加工誘起変態率が高かった.これは,端部に近い位置ほど加工度(塑性ひずみ)が高いためである.また,成形中の素板温度が高い条件ほど,残留オーステナイト量が多かった.つまり,加工時の発熱を利用することにより,残留オーステナイト量を増大でき,時期割れ防止に活用できる可能性を見出した. ■5.モーションコントロールによる角筒絞り加工の成形性向上 ■SUS304の角筒絞り成形において,サーボプレスのモーションコントロールを活用して成形性の向上を試みた. ■■■■実験条件■■成形には2000kNリンク式ACサーボプレス(コマツ産機,H1F200)を用い,工具には,SKD11製の平頭角形パンチ(幅37.8mm,奥行き57.8mm,肩R4mm),ダイ(ク(a) (b) Fig.6 Effect of tools on austenite fraction : punch speed (a)200mm/s, (b)60mm/s リアランス1.1mm,肩R2mm),および,しわ抑えを用いた.供試材料には公称板厚1.0mmで,直径120mmのSUS304板にフィルムを両面貼付したものを用いた.成形ストロークは17mm,しわ抑え力は50kN一定とし,スライドモーションとしては,①パルス(下死点上2~8mmで3mmスライドを上昇した後に再下降),②減速(リンクモーションの50spmを100%として,80%から20%),④一時停止(下死点上4mmで0.1~2秒)を設定して,それぞれの成形性に及ぼす影響を調べた. ■■ ■実験結果■■成形した結果を図7に示す.同図(a)より,成形途中でスライドを逆転するパルスモーションでは,下死点上2mmおよび4mmでスライドを引き上げることで,割れの範囲が小さくなり,若干成形性が向上することがわかる.しかし,割れを回避できるまでには至らなかった.また,同図(b)より,スライド速度を20%で一定,あるいは,下死点上12mmおよび16mmにおいて減速を開始することで割れのない成形品が得られることがわかる.同図(c)からは,成形途中で0.5秒以上スライドを停止することで,割れのない成形品が得られることもわかる.以上を考察すると,本成形では,パルスモーションでの成形性向上が小Fig.7 Effect of slide motion patterns on formability (a) Step motion (b) Deceleration motion (c) Stop motion - 41 -

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