FORM TECH REVIEWvol27
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度により工具への伝熱の様子が異なることがわかった.いずれにせよ,熱伝導率の低い工具やフィルムを用いると加工時の発熱を素板の温度上昇に活用できることが明らかになった. ■■ ■ ■成形荷重■素板温度の上昇が成形荷重に及ぼす影響を調べるため,パンチ荷重線図を比較・検討した.結果を図5に示す.図より,200mm/min,60mm/minいずれの成形速度でも,ZrO2,SKD11,フィルムの順に成形荷重が低いことがわかる.ZrO2は成形中の温度が高いにもかかわらず成形荷重が高い結果となったが,これは素板と工具間の摩擦係数によるところが大きい.また,同図(a)(b)から成形荷重に及ぼす成形速度の影響を調べると,200mm/minでは60mm/minと比較して,最大成形荷重はやや低かった.これは,潤滑油の速度効果による摩擦係数の低減と,素板の温度上昇による材料強度の低下の両者の影響が考えられるが,最大成形荷重の低減は3%程度であり,加工時の発熱による成形荷重の低減効果は小さいと思われる. ■■ ■■■残留オーステナイト量■SUS304の深絞り成形品に見られる時期割れは,加工誘起変態や残留応力に深く関係すると言われている.成形中実験には,自動型万能絞り試験機(㈱東京試験機製SAS-200D)を用いた.成形速度は200mm/minおよび60mm/minに,しわ抑え力は8kNに設定した.素板温度は,素板圧延方向の端部にあらかじめK型熱電対(素線径0.2mm)を溶着することによって測定した.また,残留オーステナイトの測定は,X線応力測定装置(㈱リガク製AutoMATE)を用いて素板の圧延方向について行った.なお,X線の線源としてはCo-Kα線を用いた. ■■ ■実験結果■■■ ■■■素板温度■まず,成形中の素板温度に及ぼす工具およびフィルムの影響を調べた.成形中の素板温度を図4に示す.成形の後期で熱電対は外れてしまうが,フランジ端部がダイR部に到達するストローク30mm程度まで,素板温度を測定できた.いずれの型材においても成形速度200mm/minの方が素板温度は高く,ZrO2やフィルムを用いた場合には,SKD11を用いた場合より素板温度が高くなった.成形速度200mm/minでは,フィルムを用いた場合に素板温度が最も高く,ストローク28mm付近で概ね100℃にまで達した.また,成形速度60mm/minでは,フィルムを用いた場合よりZrO2を用いた場合の方が素板温度は高く,成形速Fig.3 Mechanical property of specimen Fig.4 Effect of tools and punch speed on blank temperature Fig.5 Punch load-stroke curve : punch speed (a)200mm/s ,(b)60mm/s (a) (b) - 40 -

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