FORM TECH REVIEWvol27
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■ ■ 写写真真位位置置■■ 削削除除ししなないいででくくだだささいい■■■■温度上昇に伴って低下することから,この加工発熱を利用して被加工材の温度上昇を達成できれば,通常の冷間加工と比較して低荷重での成形が可能になると考えられる.しかし現実には,成形中の被加工材は金型に接しているため,発生した熱の大半は金型に伝導し,発生熱を成形に利用できるほど効果的な被加工材の温度上昇は望めない.また,成形品の寸法精度の観点からは,塑性ひずみの大小により加工発熱量が異なるため,成形品の部位ごとに成形中の温度が異なり,その後の熱収縮によって寸法精度を悪化させる. 一方,温間加工では,被加工材を炉で加熱することや金型をヒータで加熱して成形を行うことで,冷間加工に比べ成形荷重の低減や成形限界の向上を達成できるが,被加工材や金型を積極的に加熱するため,エネルギー消費は大きい.地球温暖化対策の観点から生産現場では省エネルギー化が一層求められており,エネルギー消費を抑えた新しい成形方法の開発が望まれている. 本研究では,金型材料に熱伝導率の低い材料を用いることや,サーボプレスのスライドモーション制御を活用することにより,被加工材-金型間の伝熱を制御することを試みる.それにより,加工発熱を被加工材の均一な昇温に活かし,省エネルギー効果が高く,成形性・寸法精度に優れた冷間加工法の確立を目指す. 2.研究の手順 本研究では,まず,①単純な圧縮試験により,断熱効果の高い金型材料,および,変形抵抗に及ぼす材料の昇温の影響が大きい素材(被加工材)について調べた1).その後,②実成形において効果を検証するため,昇温による変形抵抗の低下が大きい素材を対象に,円筒深絞り加工を行った.それにより,断熱効果の高い金型材料を用いて成形した場合に,成形性の向上や他の有用な効果があるのかを調べた2).また,加工時の発熱が製品の成形性や寸法精度に及ぼ1.まえがき ■プレス成形時の塑性変形仕事のうち90%程度は熱に変わると言われている(以下,「加工発熱」と称す).理論的に計算すると,変形抵抗1000MPaの鋼系材料を相当塑性ひずみ1.0まで圧縮した場合,材料温度が約250℃上昇するほどその発熱量は大きい.一般的に,材料の変形抵抗は*大阪産業技術研究所 加工成形研究部 主任研究員す影響も大きいと考え,③角筒絞り加工やアルミニウムの衝撃押出し成形において,サーボプレスのスライドモーション制御により素材温度を適切にコントロールし,成形性および寸法精度の向上を図ることを試みた3).以下,順に,それぞれの検討結果を示す. 3.圧縮試験による検討 ■■■■実験条件■■圧縮試験は,富士電波工機㈱製の熱間加工再現試験装置THERMECMASTOR-Z(FTZ-203A)を用いて行った.図1に試験装置の概略を模式的に示す.被加工材はオーステナイト系ステンレス(SUS304)および純チタン2種(TW340)とし,直径8mmの引抜き材から直径8mm,高さ12mm(±0.05mm)の円柱試験片を切り出して試験に用いた.金型形状は直径20mm,高さ10mmの円柱状圧板とし,金型材料には,一般的な冷間加工用金型材料であるSKD11,熱伝導率の低い材料としてジルコニア(ZrO2)とステライト,熱伝導率の高い材料として超硬合金(WC)を採用した.被加工材と金型材料の熱物性(熱伝導率,比熱,密度,温度伝導率)の参考値を表1に示す.なお,温度伝導率は,熱伝導率を熱容量(比熱と密度の積)で除したもので,材料内の温度の伝わりやすさを示す物性である. 試験片が金型に凝着する程度は金型材種によって異なるため,試験片と各金型との摩擦条件を統一することを目的に試験片と金型の間に天然雲母板(直径20mm,厚さ0.2mm,熱伝導率0.7W/(m・K),比熱206J/(kg・K),密度2,700kg/m3)をセットして試験を行った.また,試験片が大気から熱的影響を受けないように,チャンバー内を真空(1.5Pa程度)にすることで対流の影響を小さくし,試験片周辺をアルミ箔で覆うことで放射の影響を小さくした.圧縮速度は,0.1mm/s,1.0mm/s,10mm/sの三段階に設定し,試験片の温度上昇に及ぼす圧縮速度の影響を調べた.圧縮中の試験片の温度は,R型熱電対(素線径0.2mm)を円柱試験片の側壁中央部表面に溶着して測定した.■■■ ■実験結果■各金型および各圧縮速度条件における,圧縮率60%(ストローク7.2mm)時の荷重を図2に示す.SUS304,TW340ともに,どの金型材料を用いた場合においても,圧縮速度が高いほど荷重が低かった.また,ほとんどの条件で,金N. Shinomiya - 38 -加工発熱の利用および金型への伝熱を制御加工発熱の利用および金型への伝熱を制御した低荷重・高精度プレス成形法の開発した低荷重・高精度プレス成形法の開発■四宮 徳章*四宮■徳章 Review

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