ることを目的とした.複合モーション制御が可能なマイクロ圧縮試験により,単軸圧縮変形中の応力緩和量を定量的に評価した.これにより,超音波振動によるステップモーションにおける応力緩和の重畳効果およびその寸法依存性を検証する.中島法に基づいた板材の成形限界線図を求めるために,形状の異なる試験片を用いた球頭張出試験を行った.ステップモーションなどが成形限界に及ぼす影響を調査した.板厚が0.1mm以下の薄材の成形限界への影響も調査した.3・1実験装置および実験方法モーション制御および超音波援用が金属薄材の成形限界に及ぼす影響を調査するために,図5に示す超音波振動装置を有するマイクロプレス成形システムを開発した.本システムでは,自動で加工モーションを制御可能かつ分解能0.001mm/sの高精密な加工が可能なため,卓上型精密サーボスクリュープレス機(合同会社微細加工研究所:DT-J32)を用いた.超音波振動子は,卓上プレス機へ導入するために発振周波数100kHzの小型振動子を採用した.加工工具は超音波振動子先端にネジ締結によって取り付けられ,用途に応じて種々の形状のパンチを用いることができる.超音波発振器は周波数自動追尾機能を有しており,共振周波数100±10kHzの範囲内では一定振幅で加工可能である.パンチへの負荷荷重は上部金型に内蔵されたロー図5卓上型精密サーボスクリュープレス機と超音波援用マイクロ成形システム概要(a)装置写真(b)超音波援用システムと金型の拡大図図6球頭張出金型の断面図ドセルによって測定した.また,中島法に基づくマイクロ球頭張出し試験金型を作製した.図6に張出し加工部の断面を示す.超音波振動パンチはØ5mmの球頭型となっている.本加工システムを用い,ノーマルモーションおよび図7 (a), (b)に示すステップモーション,ステップ・超音波振動複合モーションにより張出し加工を行った.また応力緩和による成形性向上効果を最大限発現させるため,応力緩和回数を10回,応力緩和時間を10秒,超音波振動を最大振幅である0.6μmとした.ここで応力緩和の間隔は,ノーマルモーションにおいて破断するまでのストロークの平均を11で除した値とした.加工速度は0.01mm/sで一定とし,摩擦の影響を抑制するために,パンチと接触する供試材表面にグラファイトスプレーを塗布した.加工後は,ネッキング部における円の変形量から最大主ひずみおよび最小主ひずみを算出した.再現性を確認するため各条件3サンプルずつ試験を行った.図7 張出成形の各種モーション(a)ステップモーション,(b) ステップと振動の複合モーション供試材として板厚0.03mm, 0.05mmおよび0.08mmの黄銅箔材(JIS: 2680-H) を用いた.ここで,応力緩和は転位拡散に起因する効果のため,多くの転位が拡散されることを期待し,圧延後に焼鈍しされておらず転位密度の高いH材を採用した.異なる応力状態を表現するために,ワイヤ放電加工により,図8(a)に示すように幅4, 10mmおよびØ20mmのダンベル型と円形の試験片を作製した.また破断限界ひずみを測定するために,図8 (b)に示すように,黄銅表面にフォトリソグラフィーによってØ50μm,ピッチ60μm,厚さ2μmのドットパターンを作製した.図8試験片写真(a) 幅4, 10mmおよびØ20mmのダンベル型と円形の試験片(b)試験片表面のドットパターン- 17 -
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