FORM TECH REVIEWvol27
18/100

図2測定区間での摩擦係数の変化図3測定区間での摩擦係数の変化(摺動速度500mm/s, 圧力5MPa)図4 圧力と摩擦係数との関係(引抜き方向:圧延方向)表2各種実験条件下での摩擦係数(摺動速度5mm/s, 圧力5MPa)3.薄材の成形性に及ぼすモーション制御の効果100kN 共和電業社製)で測定した.摩擦力を圧縮力の二倍で除することで摩擦係数を求めた.サーボプレスのスライドに加速域,減速域がある為,本実験の評価区間は500mm/sでは引張り始めから0.02秒の時点から0.1秒間,5mm/sでは引張り始めから2秒の時点から10秒間とした.2・2 実験結果及び考察試験条件と計測した摩擦係数を表2に示す.また,評価区間内での時間と摩擦係数の関係を図2,3に示す.試験速度5mm/sの評価区間内では,一定の値となったが,試験速度500mm/sでは徐々に摩擦係数が減少し,かつ振動が小さくなる結果となった.引抜速度を変化させた時の圧力と摩擦係数の関係を図4に示す.試験速度が低速の時よりも,高速の時の方が計測される摩擦係数は低い値が示された.特に今回の実験では,圧力が約5MPaの時の試験速度500mm/sでの摩擦係数が,ほぼ同等に圧力を加えた5mm/sでの摩擦係数の半分程度の値となった.2・3 考察引抜速度500mm/sの時に計測された摩擦係数よりも5mm/sの時に計測された摩擦係数の方が大きい値を示した理由として,試験中の試験片表面の潤滑剤内の圧力が影響していると考えられる.試験片表面がダル仕上げとなっているので,試験中,素材と金型間に潤滑剤が溜まり易い状態となっている.引抜速度が高速の場合,素材と金型間の潤滑剤が,外に出る量が少なく,潤滑剤の圧力上昇により,摩擦係数が減少したと考えられる.圧力と摩擦係数の関係に関しては,本実験では表面ダル仕上げの試験片を使用しているため,圧力を増大させることで,試験片表面の凹凸が潰れていき,潤滑剤内の圧力が上昇したために摩擦係数が減少すると考えられる.ただし,試験速度500mm/sの場合は,圧力の影響が低速の場合と異なっている.摺動速度と面圧によって,摩擦特性が異なることが分かった.サブミリメートルオーダーのマイクロプレス成形では,代表寸法に対する結晶粒径比が大きくなるため,個々の結晶粒に起因した不均一変形が生じ,成形が低下する4).成形性向上のアプローチの一つにステップモーションがある5).加工停止中の応力緩和による可動転位の粘性移動が生じ,均一な材料変形が促される.一方,超音波振動による転位拡散の促進効果が報告されており,ステップモーションとの複合化によりさらなる成形性の向上が期待できる6).本実験では,ステップモーション制御と超音波振動の複合化による効果を明らかにす- 16 -

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る