FORM TECH REVIEWvol26
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*創価大学理工学部共生創造理工学科 教授1987年,アマダグループの創業者 天田 勇によって財団法人天田金属加工機械技術振興財団が設立されました。その後,2011年に公益財団法人に認定され,金属等塑性加工への研究開発助成を通じて,科学技術と産業の振興のための公益事業の展開に努力を重ねてまいりました。また,2007年からは助成対象領域をそれまでの金属等の塑性加工からレーザプロセッシングへと拡大し,高密度エネルギービームであるレーザを応用した金属,セラミック等新素材の加工に関する研究開発への助成を開始いたしました。言うまでもなく今日に至るレーザ装置の発展は,未来の“モノづくり”への新たな期待感を与えるほどの成熟した段階を迎え,その活用は金属の切断,溶接等の熱的加工はもとより,超短パルスレーザのよるセラミック,半導体材料,その他新素材の非熱的加工という領域へと拡大してきております。2007年から助成を開始したレーザプロセッシング分野もこれまでに多くの研究課題に対し助成を行い,数々の研究成果が報告書としてまとめられる段階になりました。一方,応募に関しましては,28年度はこれまでになく多くの方々から応募いただき,レーザプロセッシング分野創設の段階から関わらせていただいた一人として喜びにたえません。当初レーザプロセッシングの公募に際し,財団の公益事業の志をなるべく多くの研究者にどの様に広報し,ご理解いただき,そして有意義に研究に活用していただけるか,意見を交わしながら進めてまいりました。そういった努力は今も継続しております。“モノづくり”の基盤となる金属等各種の材料の加工に関する観点からどのような研究開発テーマが助成に相応しいのか,毎年試行錯誤の連続であります。特に,レーザの応用は多岐に渡っており,物質との相互作用を全て加工と捉えればその裾野は優先すべきかどうかの判断に迷うグレーの境界領域ともなります。しかし一方で,そういった境界領域にこそレーザ加工のイノベーションが芽生えている場合もあり,新しい科学技術と産業が創出される可能性もあります。画一的な線引きをすることをできる限り避けながら,研究者の方々の多くのアイデアに助成ができるように,これからも鋭意努力をしてまいりたいと存じます。天田財団30周年記念事業に合せて『FORM TECH REVIEW 2015』からこれまでのレーザプロセッシング分野の研究助成の中からいくつかのテーマを掲載していくことになりました。『FORM TECH REVIEW 2015』の説苑で述べたように,レーザプロセッシングでは研究テーマを概ね以下のように分類して,研究分野の時流に合せて「特集」を組んでゆく予定です。1.LP高性能化のための装置開発と改良2.レーザ光による各種接合技術と切断技術,3.レーザ光でしかできないマイクロ加工4.自由自在のレーザ表面改質技術,5.レーザ光の特長を活かした特殊加工6.レーザ光の特長を活かした材料開発,7.金型を要しない成形技術8.レーザ光でもできるエレキ応用9.その他本誌『FORM TECH REVIEW 2016』では,「レーザ光の特長を活かした特殊加工」について特集し,これまでの各種の興味深い研究テーマの中から幾つかを抽出して掲載いたしております。これらは,材料表面のトライポロジー特性,撥水性の向上,半導体表面の周期的ナノ構造の生成,半導体・セラミックス材料への深掘り,貫通穴の加工,薄膜磁石材料中での選択的な微小着磁,ナノ粒子の水中ドーピング,マイクロダイアモンド工具の再生エッチング技術,レーザ焼結によるセラミック構造体の生成などで,主にレーザ加工ならではといえる材料表面への特殊微細加工,高付加価値付与への挑戦的研究であります。 上記のテーマ分類は,裾野が広いレーザ加工分野をこれまでの応募テーマをみながら暫定的に設けたもので,採択の画一的なものではありません。これまでのレーザ加工のさらなる技術的進歩を背景に,常に流動的にものを考え,新しい分野を挑戦的に開拓してゆくことも忘れてはならないと思います。その意味でテーマ分類を固定的と考えず,多くの研究者の方々により積極的に応募を寄せていただくことを念願いたします。その結果,皆様に新しい研究成果を創出していただき,当財団の公益的事業の推進に一層のご助力をいただければ幸甚であります。- 145 -説苑レーザプロセッシングの多様性と新たな“モノづくり”を目指して渡辺 一弘*K. Watanabe

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