モンド素材の適用が多く行われている.化学気相成長(CVD)法によって超硬合金や工具・金型鋼の表面にダイヤモンド被覆を行う用途は多く,CVD法は複雑な工具や金型形状に対応し易い特徴を持っている.現在,市販されているCVDダイヤモンド被覆工具の表面粗さは最高品質のものでRz=1~2µm1)と言われているが,加工面品位を向上させるにはダイヤモンド被覆の表面粗さをより向上させる必要がある.また,ダイヤモンド焼結体(PCD)も硬度,化学的安定性に優れており,切削工具の他,プレス金型部品として摩耗が激しい部位への組み込みや耐摩耗材として用いられている.PCDへの形状創成加工は放電加工によって行われるが,複雑で曲面を有する箇所の仕上げ加工には課題が残されている. CVDダイヤモンド表面の表面粗さを向上させる方策としては,1)ダイヤモンドの成長条件制御による結晶粒塊微細化,2)微粒ダイヤモンド砥石による研削,3)ダイヤモンド砥粒によるラッピング,4)特殊金属材料などとの熱化学反応法,5)高調波YAGレーザ照射法,6)ピコ秒レーザ照射による蒸発法などが提案されているが,装置価格,加工コスト,加工時間,特に複雑形状への対応が困難であるなどの問題があり,1)の結晶粒微細化法以外は何れも実験段階に留まっているのが現状である. 既存YAGレーザによるCVDダイヤモンド膜の表面粗さ向上に関する研究としては,吉川,戸倉ら2)や安永,鈴木ら3)はダイヤモンド膜表面とほぼ平行(照射角θ=80~89°)にレーザを照射する場合のみCVDダイヤモンド成長面上の突起部を選択的に除去し,表面性状を向上できることが報告されている.しかし,ダイヤモンド膜表面に対しほぼ平行にレーザを照射する方法では複雑形状を有するドリルやエンドミルへの適用は容易ではない. 著者らは数10~100µmの微細ノズルから高圧(10MPa~)で噴射される細い水柱の内部にレーザを閉じ込めて加工点まで導く水ガイドレーザ4)(図1)(図1)をダイヤモンド類の微細加工に応用する研究5)を行ってきた.水ガイドレーザはノズル先端部からの距離が数10mmの範囲においてビーム径およびエネルギー密度が変わらないため,凹凸のある立体形状に対しても加工できること,レーザ照射1.はじめに1.はじめに 耐久性の向上を目的に金型部品や切削工具へのダイヤ*富山県立大学工学部 准教授点近傍を常に高圧水で冷却しているため照射面の熱変質がきわめて少ない特徴も併せ持っている.また,水ガイドレーザに使用されているレーザ波長帯域(λ=532nm)はダイヤモンドの除去に適していると言われている3). 本研究では,数10mmに及び同一のビーム形状やエネルギー密度を持ち,照射面に発生する熱を瞬間的に除去できる特徴を有する水ガイドレーザを用いてCVDダイヤモンド膜の結晶凸部のみを図1図1のように選択的に除去し,結果として面性状を向上させることを目的としている.本報告ではCVDダイヤモンド厚膜の結晶成長面およびPCD表面の加工状況を調べた.2.実験方法2.実験方法 実験装置および条件を表1表1に示す.CVDダイヤモンド厚膜の結晶成長面(初期粗さRz=60µm)およびPCD表面への水ガイドレーザの照射実験は図2図2のように行った.水ガイドレーザ径100µm,加工点と水ガイドレーザ照射口の間隔Cl=20mm,レーザ出力(実効値)Pe=30W,周波数15kHz,パルスオン時間100nsとした.走査速度はF=10m/minである.- 113 -M. Iwai岩井 学*Review5.レーザ光の特長を活かした特殊加工水ガイドレーザによるダイヤモンド金型部品の精密加工
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