天田財団ニュース No18
7/20

ナノ周期構造+凹みレーザー誘起ナノ周期構造光の走査ナノ周期構造フェムト秒レーザー光ナノ構造なしナノ構造あり入射光反射光透明材料透過光❶❶❷❷❶リアルタイム監視とフィードバックにより安定した加工ができるデータ駆動型レーザー加工/❷研究グループで開発した広域パラメータ可変レーザー加工装置/❸多様なレーザー加工技術を研究開発する実験システム奈良崎先生が所属するレーザー加工フロンティア研究グループのメンバー。左からDaniela SERIEN主任研究員、奈良崎副研究部門長、山室悠香研究員❸❸してレーザーパラメータを高速変調する技術の3つのコア技術から成り立っている。 産業技術総合研究所(以下、産総研)と共同研究のパートナー、東京農工大学の宮地悟代教授の研究グループは、この技術をガラス表面へのナノ周期構造形成に応用するため、透明材料表面へのナノ周期構造形成をインプロセスモニタリングできる計測手法を新たに開発した。このモニタリング技術では、モスアイ構造などのナノ周期構造が表面反射率を抑え、透過率を増加させることを利用し、レーザー照射領域の反射率が減少、透過率が増加したときに、ナノ周期構造が形成されたことを検出する。 この技術により、加工後に表面観察を行わずとも、ナノ構造形成が判別できるため、ナノ構造形成の品質保証だけでなく、観測結果に基づいた動的レーザー制御により、ナノ構造の安定形成も行うことができるようになった。これにより、ナノ周期構造が形成されない欠陥の発生率を、大幅に低減することに成功し、世界に先駆けてデータ駆動によるレーザー表面微細加工の高品位化を実証した。 本開発技術と、高速なレーザー強度変調を組み合わせることにより、ナノ構造の安定形成が可能となり、ガラス表面にフェムト秒レーザーパルスを照射するだけで数百㎚の周期の溝を均一に形成できる。そのため、多段プロセスや薬剤不要な微細加工技術として注目されている。 また、レーザー光の走査でナノ周期構造を材料表面に形成できるため、複雑なジオメトリへの表面微細加工や大面積材料へのナノ加工も可能となった。このような大面積領域にナノメートルサイズの微細加工を行える技術はほかにはない。そのため、メタマテリアル表面形成、構造色表面加工、MEMS用表面加工、広帯域の無反射表面形成、照明光源の指向性表面形成、X線用光学素子作製、構造化光発生用素子作製などへの応用も期待される。 この研究成果は、2025年1月に米国サンフランシスコで開催された、世界最大級の光産業展示会・国際会議である「SPIE Photonics West 2025」で、奈良崎氏がHot Topic講演を行い、注目を集めた。「機会」と「ヒト・資源」に恵まれた 「先端の複数技術を必要とする研究開発に取り組めるの 今回採択された研究では、これまでの研究成果を活用し、世界に先駆けてデータ駆動型超短パルスレーザー内部の描画技術の基盤構築とデモンストレーションを目指す。は、グループメンバーやリサーチアシスタントである学生のみなさん、ネットワークが緊密な国内レーザー加工分野のアカデミアの先生方の協力の成果であり、恵まれた研究分野にいると感謝しています。産総研は総合研究所であるため先端材料やデバイスの研究者も多く、企業との共同研究の機会も多いことから、多様なレーザープロセスを開発する『機会』と『ヒト・資源』に恵まれた環境にあります」。 「今後の研究や方向性としては、データ駆動型レーザー加工の産業実装に向けて、高速な大面積プロセスへの適用検討を進めていきます。また、これまではモニタリングが容易な材料表面の機能化に応用してきましたが、レーザー本来の魅力であり、ほかの製造技術では難しい、透明材料の内部加工にもデータ駆動型レーザー加工を駆使し、その産業実装に挑戦してみたいと考えています」と奈良崎氏は述べている。7プロセスモニタリング反射光・透過光計測でナノ構造を高感度に検出データ駆動型レーザー加工データベースに基づくリアルタイムフィードバックプロセスデータベース反射率・透過率データとナノ構造の相関

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る