4助成型公益財団巡り0202 民間の助成型公益財団や公益財団の設立が盛んとなり、助成、表彰、奨学など、民間の財団活動が重要なものとなっているが、天田財団の事業活動をはじめとして、これらの活動は未だ必ずしも社会的に十分理解されているとは言えない。長期的な視野に立ってその活動を継続するための基盤整備が必要となっている。 そこで天田財団ニュースでは、国内で活発な活動を行っている民間の助成型公益財団を尋ね、現在および将来の財団活動についてお聞きする「助成型公益財団巡り」を、2024春号(No.16)からスタートした。 第2回となる今号では、1955年に東洋アルミニウム㈱の「創立25周年記念事業」の一環として、東洋アルミニウム㈱と当時同社の大株主であったカナダのアルキャン・アルミニウム・リミテッドの協力のもと、「軽金属に関する学術の研究及び教育を助成・奨励して、我が国の軽金属工学及び軽金属工業の進歩・発展に寄与する」ことを目的に設立した、公益財団法人 軽金属奨学会を紹介する。 公益財団法人 軽金属奨学会が発足した当時、日本の軽金属(アルミニウムあるいはマグネシウムやチタンなどを主成分とする金属材料)産業は熾烈な国際競争の中で、欧米先進国に対し、技術・設備の両面で大きく立ち遅れていた。この遅れを取り戻すには、一日も早いアルミニウムに関する根本的な基礎研究と、情報収集力の強化が最優先課題であった。こうした状況に危機感を抱いていた当時の東洋アルミニウム㈱の社長、故・小山田裕吉氏は1955年、東洋アルミニウム㈱の記念事業の一環として設立――70年で研究者5,600名を支援公益財団法人 軽金属奨学会のメンバー(後列右が後藤全事務局長、後列中央が氏江達之事務局長補佐、前列中央が浅田淑専務理事)70年間で延べ5,600名あまりの研究者を支援してきた。同社の「創立25周年記念事業」の一環として、当時同社の大株主であったアルキャン・アルミニウム・リミテッドの全面協力のもと、「財団法人 軽金属奨学会」を設立した。 そして、産・学協同で軽金属に関する研究に着手してもらえるよう、この種の学科を設置している全国の大学研究室や研究者に研究資金の提供を開始した。これが同財団の代表的事業として、設立以来一度も途切れることなく続いている「教育研究資金」「研究補助金」である。過去 ほかの主要事業としては、設立当初に開始した「奨学金」「海外交流補助金」「研究設備購入」「図書購入文献寄贈」「研究試料提供」「出版刊行」などがある。1968年には「表彰」事業を開始、1980年から1990年代には「研究成果発表」「課題研究」「シンポジウム等助成」「軽金属フォーラム」事業を立ち上げた。さらに2007年には新事業として「統合的先端研究」を開始した。2010年には公益財団法人への移行が認可された。 今須聖雄理事長(元・東洋アルミニウム㈱代表取締役会長)は「70年の歴史の中で、現在も継続している事業、役目を終え廃止した事業、一時中断している事業、内容を見直して再開した事業などがありますがその時代、時代に併せて柔軟に対応してきました。特に基礎研究や社会課題の解決のための研究テーマへの助成には重点的に取り組んでまいりました」と語る。公益財団法人 軽金属奨学会財団設立から70年、軽金属工学の進歩・発展に貢献科学研究で存在感が低下する日本の学術研究を支える
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