天田財団ニュース No18
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❶❶❷❷レーザー装置の前で説明を行う久志本准教授❸❸❶電気特性評価装置/❷ワイヤーボンダー/❸全自動多目的X線回折装置 そこで、レーザー結晶の形状制御による剪断応力の集中抑制手法を提案し、深紫外波長域の半導体レーザーの結晶欠陥の抑制およびデバイス構造設計を通したデバイス特性の向上により、当初の1/10の電力で動作し、室温で連続波発振する半導体レーザーを世界初で実現した。紫外半導体レーザーの光学特性解明」では、深紫外半導体レーザーの閾値低減に向けて利得特性の解明を目指している。半導体レーザーの利得解析には、スペクトル中の縦モードを解析する、ハッキパウリ法が一般的には用いられている。しかし、深紫外半導体レーザーでは発振波長が短く、スペクトルに見られる縦モード間隔が非常に狭いため、従来の評価装置の波長分解能では不十分となるため、利得特性が未解明となっている。 久志本准教授はこの問題の解決策として、極短共振器長を有する深紫外半導体レーザーを挙げている。共振器長を短くすることで縦モードの波長間隔を拡げ、従来の評価装置が有する波長分解能でも利得特性を評価できるようになると考えた。そのため、まずは従来手法では作製することが難しい、極短共振器を有する深紫外レーザーの作製方法を確立する。その後、作製した極短共振器を有する深紫外レーザーを用いて測定手法を確立し、利得特性の評価行っていくという。 具体的には、すでに久志本准教授らの研究グループが実証したウエハ形状のまま深紫外レーザーを作製する技術をさらに発展させ、極短共振器長の深紫外レーザーを試作する。この手法では、ミラー端面を半導体薄膜エッチングとALD成膜により作製する。この方法で、50㎛程度までの短い共振器長を有するレーザー構造を作製し、実現可能な共振器長を検討する。次に、作製した半導体レーザーを用いて、既存の評価装置を基に深紫外レーザーの利得測定手法の確立を進めるとともに、利得特性の解明を目指すことが研究の主眼となっている。深紫外半導体レーザーの閾値低減に向け、利得特性の解明を目指す 今回採択された研究テーマ、「極短共振器を用いた深 「深紫外レーザーのさらなる発展には利得特性の解明が不可欠であり、本研究が少しでも貢献できれば幸いです」(久志本准教授)。須な室温連続波発振を実現したが、青色半導体レーザーの発展当初のような活発さがあるとは言えないという。その要因のひとつは時代が変化し、ものづくりを牽引してきた企業が、新規デバイスの開発に積極的に関われなくなっている状況があると、久志本准教授は考えている。このような状況下においても、半導体デバイス技術の発展を進めるために、深紫外半導体レーザー技術の発展に努めることで実用化を推進し、ものづくりの分野に貢献したいと久志本准教授は日々、研究を行っている。 「私の強みは、専門知識を活かし、研究の全体像を把握しながら技術発展へと導く力だと思っています。また、問題解決に向けたクリエイティブなアプローチと、新しい技術の導入に積極的に取り組む姿勢も私の長所だと思います。研究の成果を社会に還元し、ものづくりの進展に寄与することを目指して、引き続き努力を続けていく所存です」と久志本准教授は語っている。ものづくりの発展に寄与できる研究を行う 久志本准教授は深紫外半導体レーザーの実用化に必17

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