天田財団ニュース No18
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❶❶❷❷❶真空チャンバーや制御装置、分析装置などが組み込まれた、プラズマ計測システムの外観/❷ミラー磁場型HiPIMSにスパッタリング蒸着を行う様子/❸あらゆる条件を変えながら成膜されたステージ❸❸清水研究室の学生たちと清水准教授(右)――この疑問に対して、成膜基材に降り注ぐ蒸着粒子の入力条件や、高電圧をかける際の周波数などを切り替え、さまざまなパターンで解析することが、本研究の軸となっている。清水准教授の研究室では幅広い産業分野に向けて、各用途にマッチした多様な硬質薄膜材料の研究に取り組んでいる。研究対象の材料が、c-BNを含む窒化物や酸化物材料および純金属薄膜ということもあって、金型分野への応用だけではなく、最近では半導体業界からの依頼も増え、同研究室とのコラボレーションが相次いで立ち上がっている。 さらにメディカル分野では酸化マグネシウムをコーティングすることで、マグネシウム製のインプラントの生体内の耐食性向上などを目標とした研究にも着手してきた。また、水素を製造する過程で、必要となる化学反応を促進させる触媒材料などに用いられる「ナノ粒子」の形成プロセスの開発にも関与している。 「薄膜プロセスの研究者集団である私たちは、過去の膨大な研究成果に基づいた製膜プロセスの活用方法を産業界へ提案することで、材料開発に従事する多様な人々をお手伝いできる立ち位置にあります」と、清水准教授は語る。 近年は、コーティング受託メーカーやPVD装置メーカーなどから「HiPIMS技術を手がけてみたい」という相談が同研究室に多く寄せられている。こうしたニーズに応えるた南を手がけるスタートアップ企業を立ち上げる。高性能なHiPIMS電源やスパッタリング蒸着源などを開発しながら、企業向けのサポート事業に応用していく構想も描いている。学東京でマイクロ精密プレス加工特有の摩擦現象に関する研究で博士号を取得した。その後、表面トライボ設計にめ2025年4月、HiPIMSの技術サポートや電源の選定指HiPIMS技術が貢献できる産業分野 HiPIMSを適用できる固体原材料は千差万別である。東京都立産技研での企業向け技術支援が、本研究テーマの起点になる 清水准教授は東京都立大学工学部を卒業後、首都大関する専門を軸に、さらにそれを活かしたモノづくり技術支援を目指して、2011年より東京都立産業技術研究センター(以下、都立産技研)に、研究員として1年間在籍した。 「自身の研究成果などを活かして、中小企業への技術支援を行う業務は、世の中への貢献を強く実感できるものでした。実は今回採択された研究テーマも、都立産技研でのご縁が起点となって、今現在まで発展してきました」と、清水准教授は明かす。その後は首都大学東京でシステムデザイン学部 助教を務め、スウェーデン・Linköping大学での客員研究員を経て、2020年からは東京都立大学 システムデザイン学部で、同分野の研究を継続している。 清水研究室には清水准教授のほか、博士・修士課程の院生10名(うち留学生2名)、学部生4名が在籍している。所属している学生の半数以上が企業との共同研究のメンバーにも名を連ね、会議にも参加している。 「学生にはもっと研究活動を楽しんでもらいたいというのが、私の強い思いです。実際、世の中にない新しい材料を形成したり、さらに優れた特性が得られた瞬間などは、私自身もすごくワクワクします。多くの研究活動を通じた出逢いを通して、多様な専門性と個性を持つメンバーが力を合わせて導き出す研究結果には、世の中をガラリと変えるほどの可能性を秘めているということを、未来のものづくりを支える若い世代に伝えていきたい」と、清水准教授は強調する。13

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