天田財団ニュース No18
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金型金型加圧圧縮前圧縮後顔料インク、トナー軟質材料被加工材(金属)金型加圧移動移動加圧顔料インク、トナー顔料インク、トナー軟質材料軟質材料被加工材(金属)ロールロール被加工材(金属)金型❶❶❷❷❶天田財団の2019年度「一般研究開発助成」に採択された研究の際に製作された実験用圧延機/❷印刷物を工具に用いたほかの凹凸転写方式/❸印刷工具の凹凸をアルミニウム円板に転写したQRコード吉川准教授と研究室の学生❸❸く圧延や転造でも行うことができる。 吉川准教授は天田財団の2019年度「一般研究開発助成」に採択された研究の際に実験用圧延機を製作し、この凹凸転写法の大面積化に成功、加工条件の影響を調査した。なぜ軟らかい材料がそれよりも硬い金属を変形させられるのか、興味深い点である。そのメカニズムについても調査を進めており、印刷物を工具とした円板圧縮の場合は「局所変形モード」と「トナー埋め込みモード」の2つの転写形態の存在が明らかになった。また、工具として使用する樹脂フィルムと、被加工材金属の材料特性や大きさが影響をおよぼしていることを示した。  このように吉川准教授は加工方法の基礎研究を進める一方、本転写方法の活用への模索も進めている。本凹凸転写技術は写真のような高精細なデザインも可能であることから、メダルや自動車用の加飾部品、建材などへの応用が挙げられる。また、印刷手法と転写条件を工夫することで、深溝の成形も可能であり、流路構造物の製造に活用すれば、パワーデバイスのヒートシンク部品などにも応用できるようになるとしている。て、部品に対してシリアルナンバーの付与や製品情報の書き込みが行われている。個々の部品へのナンバリングには、粘着シールに情報を印刷して製品に貼ったり、金型やレーザーマーカーによって部品表面に直接情報をマーキングする方法がとられている。 しかし、金型によるマーキングでは成形品に個別のナンバリングをすることは難しい。レーザーマーカーは金属にマーキングすることは可能だが、設備として高額な高出力レーザーマーカーが必要なうえ、使用にはレーザーの漏洩がないよう、十分な安全管理が必要になる。 これらの課題を乗り越えて部品一つひとつに対して個別の情報をマーキングできる方法として、印刷物を工具として用いる凹凸転写技術により、QRコードをマーキングすること軟質材料を工具に用いた凹凸転写法の展開への期待 軟質材料を工具に用いた凹凸転写法は、プレスだけでな凹凸転写技術と塑性加工品のトレーサビリティ 生産現場では個々の部品のトレーサビリティのひとつとしが考えられた。ところが凹凸転写技術でQRコードはマーキングできても、その視認性は高くなく、QRコードの読み取りに支障があった。しかし、マーキング時に凹凸だけでなく着色・分布させることができれば、視認性の高いQRコードも形成できると吉川准教授は考えた。 そこで、吉川准教授は金属への着色方法として、構造色を利用することを考案した。構造色は表面の凹凸や光路差による光の干渉により発色する。本研究によって、凹凸転写技術と構造色の発色機構を組み合わせ、塑性加工による構造色の制御手法と適用条件を明らかにすることを目標としている。性加工を利用したマーキング方法を開発していく。シミュレーションと実験により、さまざまなパラメータの影響を調査して、QRコードが読み取りやすくなる色調とコントラストを見つけ出し、塑性加工品のトレーサビリティのためのマーキング条件を最適化していく。 「この研究は塑性加工により凹凸転写技術と表面処理技術の両方を研究してきた、私にしかできない研究課題だと思います。研究成果を出し、社会実装にまで発展させていきたいと考えています」(吉川准教授)。研究成果を出し、社会実装にまで発展させていきたい そのため、吉川准教授は本研究でこれまで無かった塑11

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