天田財団ニュース No18
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研究室訪問3名城大学 理工学部 機械工学科設計・生産分野吉川 泰晴 准教授名城大学・吉川泰晴准教授2024年度「重点研究開発助成」に塑性加工分野で採択さ川泰晴准教授の研究テーマ「印刷工具を用いたトレーサビリティ向け凹凸刻印・発色技術の開発」が、天田財団のれた。 現状の金属への凹凸転写加工は、一般に貨幣製造のように凹凸を有する被加工材よりも硬い金型を金属円板に押し付け、金型の凹凸が反転したパターンを金属円板に転写し製造している。吉川准教授の発想は、これとは逆に軟質な材料を工具として使用する。軟質材料の表面に設けられた凹凸を金属板に転写する独自技術により、高精細で高精度、安価で早急に大量の同一品質の製品を製造できる技術の研究を行っている。 本研究は紙や樹脂フィルムなどの軟質材料を工具とし、金属表面に凹凸を転写する技術の基礎・応用研究である。より高精細で高精度な転写が行えるようにするため、軟質材料を工具として用いた際のトライボロジーの役割や、加工条件に関して、転写過程を詳細に分析し、転写機構を明らかにすることを目標にしている。金属への凹凸転写加工の新しい技術 名城大学 理工学部 機械工学科設計・生産分野の吉2009年には「電子ビーム励起プラズマ環境および窒素ス後、2004年4月に同大学大学院 理工学研究科に進学、ピーシーズによる金属窒化処理法の開発」の研究で博士号を取得した。2009年4月にはポスドク研究員として、豊田工業大学でプラズマ窒化の研究を行った。同年11月に岐阜大学 工学部の助教に任官、トライボロジーと塑性加工を中心とした生産加工分野の研究を約8年間にわたり行った。2017年に名城大学 理工学部の助教、2020年には現職である同准教授に就任した。 吉川研究室では、紙や樹脂フィルムを工具として金属表面に凹凸を転写する技術の基礎・応用研究や、板鍛造の工程設計および板鍛造工程中の諸問題の解決、塑性加工におけるトライボロジーに関する研究、精密金型や治具に関する研究などに取り組んでいる。材料力学・機械力学)で、ほとんどの学生は4力学の分野の中のいずれかの研究を選択していました。私はほかの人がやらない分野を研究したいと思い、プラズマを応用したコーティング、窒化処理の研究で学位を取得。その後はトライボロジー、塑性加工中心とした生産加工の分野が抱える課題をテーマとして研究しています」。 「研究を通して社会に貢献したいという強い思いがあります。学内外の業務が増える中でも、できるだけみずからの手で実験や解析を行っています。特に軟質材料を工具とした金属表面への凹凸転写技術が応用できれば、ものづくりプロセスも変わると考え、大学発スタートアップの勉強や展示会などに参加してさまざまな意見を聞き、社会実装に向けて不足しているデータの収集や情報の顕在化も行っています」(吉川准教授)。プラズマによる窒化処理の研究で学位取得 吉川准教授は2000年に名城大学 理工学部に入学した人がやらない分野の研究をやりたい 「学生時代は機械といえば4力学(熱工学・流体力学・10軟質材料を工具として金属表面に凹凸を転写する技術の研究塑性加工による構造色の制御手法と適用条件を明らかにする

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