天田財団ニュース No17
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 「一般社団法人 日本塑性加工学会」は、金属等の塑性を利用した加工、および高密度エネルギー下での諸特性を利用した加工に関する研究に係る助成を通じて、金属等の加工に関する学術の振興と、新しい科学技術の創出をはかり、日本の産業および経済の健全な発展に寄与することを目的に活動している。また、天田財団のカウンターパートナーでもある。 今回は日本塑性加工学会をリーディングする第60期会長や東京大学大学院 工学系研究科の教授であるとともに、天田財団の理事として高所大所からの助言をいただいている柳本潤先生に、これからの日本塑性加工学会の在り方や塑性加工学などについて話を聞いた。日本塑性加工学会 第60期会長の柳本潤氏塑性加工学会」は、国内で社会的な価値を持っていると同時に、世界でも塑性加工学をリードする存在となっています。 2023年9月に「第14回塑性加工国際会議」(ICTP2023)が、フランスで開催されました。3年に1度開催される同会議は日本塑性加工学会が主導することで設立された国際会議で、初回は1984年に東京で開催されています。私はこの会議に参加するたびに、日本塑性加工学会の海外でのプレゼンスは非常に高いものがあると感じています。1313一般社団法人 日本塑性加工学会 第60期会長 柳本 潤 氏■学会は活力を育み、可能性を広げていく場―日本塑性加工学会の会長に就任され、1年が経過しましたが学会の立ち位置についてお聞かせください。柳本潤先生(以下、姓のみ) 学会はSocietyであり、さらなるものづくりの未来へ向かって、専門を同じくし利害を通じて結びついている個人あるいは法人の共同体として、活力を育む場、可能性を広げていく場だと思います。最近は情報化が社会を大きく変えつつあり、生成AIの誕生など、変化の動きがさらに急になってきています。一方で、高い質の工業製品を安価に社会に向けて供給するために塑性加工学や技術が担ってきた役割には大きいものがあります。 塑性加工学を専門とする専門家の共同体である「日本(東京大学大学院 工学系研究科・教授/天田財団理事)Interview■若手研究者のプロモートにも取り組む―5月末時点の学会の会員数は、正会員2,191名、生会員141名、名誉会員38名、賛助会員364社423口となっています。一時期は4,000名を数えた正会員数がほぼ半減しています。この点についてはいかがですか。柳本 日本の生産年齢人口の減少と同じくして、日本塑性加工学会の個人会員の数が減少していることは、学会の財政問題とも関連する大きな問題です。学会はもともと、専門を同じくする方々の共同体ですので、個人・法人を問わず、会員数は多ければ多いほど、活動への関心は高ければ高いほど良いわけです。しかし残念なことに、学会の活動は強い向かい風を受け続けています。特に研究するための研究予算が不足しており、科研費など国の予算は大きく減額されています。天田財団のような民間からの研究費助成に頼っているのが実状です。 さらに、大学の研究者も高齢化が進み、退官後に後継者がいないため研究室自体がなくなるという事態も起きています。若い研究者を育むために、学会としても若手研究者の研究を応援し、プロモートする活動に取り組んでいます。 また、当学会ではカーボンニュートラル、エネルギー置換、素材置換、SDGs実現、リサイクル・リユースなど、環境問日本の将来に、貢献し続けられる学会を目指す

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