*1PM(プロジェクトマネジャー)は東京大学・原田香奈子教授 *2東京大学・新井史人教授との共同研究※針径:70µmめて工学部に学士入学しました。修士のときに2足歩行ロボットを研究し、それから工作機械を研究、マシニングセンタに各種センサを取り付け、インプロセスで機械本体や被削材の状態変化を見ながら、予見制御ができるマルチセンサ統合型システムや知能化生産システムなどを研究・開発していました」。 「1990年頃に中学の同級生に久しぶりに会ったことで、研究テーマが加わりました。彼は当時、岡山大学 医学部附属病院の整形外科医で、『指を切断した人の手術では神経をつなぐよりも血管をつなぐ方が難しい』と話してくれました。この話を聞き、私は医療分野には細かく正確なハンドリングを得意とするロボットのニーズがあると考えました。そして、彼と岡山大学 医学部との研究会を立ち上げました。当時は医工連携という事例も少なく、材料や設計に苦労しましたが、1997年に手術支援ロボットを使い、直径1㎜の微小血管をつなぐ遠隔操作に成功。これを契機に医学系の学会でも発表をするようになりました」(光石先生)。学・企業・病院との共同研究により、脳神経外科などにおける微細手術への適用を可能とする低侵襲手術支援ロボット「スマートアーム」を開発した*1。スマートアームの研究開発は、脳神経外科手術用モデル「バイオニック・ブレイン(手術トレーニングシステム)」*2を活用することで、脳神経外科医からのフィードバックを受けながら、医工連携研究として実施された。バイオニック・ブレインを用いることで、経鼻内視鏡手術における硬膜縫合を実現できる性能も確認でき、試作段階ではあるものの、手術ロボットとして世界最高水準の性能を備えている。11❶❶❶低侵襲手術支援ロボットの遠隔操作ユニット。実際にこの支援ロボットとユニットを使った遠隔手術実験が行われた/❷低侵襲手術支援ロボット/❸低侵襲腹腔鏡下手術支援ロボットは鉗子用2本、腹腔鏡用1本の計3本のアームがあり、執刀医は腹腔鏡の映像を見ながら操作するクランク機構で屈曲させた鉗子❷❷マイクロ針付き縫合糸❸❸低侵襲手術支援ロボット「スマートアーム」を開発 こうして2019年1月に光石先生らの研究グループは、大内視鏡手術支援ロボット、「ダビンチ」600台以上が国内で稼働中 日本国内において、内視鏡手術支援ロボットを使った手術としては、2012年4月に初めて前立腺がんに対する手術が保険適用されるようになり、2016年11月には腎がん、2018年4月には縦隔腫瘍、肺がん、食道がん、心臓弁膜症、胃がん、直腸がん、膀胱がん、子宮体がん、子宮筋腫に対する手術と一気に保険適用が進んだ。続いて、2021年10月には膵がん、2022年6月には結腸がんが保険適用されている。
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