天田財団ニュース No16
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症対策、ウクライナ危機をはじめとした地政学的リスクなどの課題が次々と出てきて変革期をむかえています。工作機械にも『持続可能性』や『環境配慮』が求められるようになっています。その推進には、AIをはじめとしたソフトウエアとともに、『人と協働する』機械・ロボットが必要となっています。『機械の“母”(マザーマシン)』である工作機械の担うべき役割は、ますます重要になっています」。 「当財団は工作機械技術の高度化のため、新技術の研究開発プロジェクトの発掘・支援、人材育成に助成することにより、工作機械技術の向上と工作機械産業の発展に寄与することを目指しています」(箕澤専務理事)。斬新性・創造性に優れ、かつ、実用可能性、実用化のあとの波及効果および社会的貢献度が特に大きいと見込まれる「特別試験研究助成」の3つがある。 「国際会議支援事業」では、研究者・技術者の育成に寄与するため、工作機械技術に関する国際会議に関し、会議への参加、会議の開催のための支援として「海外国際会議参加支援」「国際会議開催支援」を行う。 2023年7月1日から2024年6月30日までの「2023年度事業」では、工作機械技術に関する試験研究などに対して継続的に助成を行うことを含め、「第45次」の表彰事業、試験研究助成事業、国際会議関連支援事業――などが計画されている。財団情報17財団名 公益財団法人 工作機械技術振興財団理事長 安達 俊雄専務理事 箕澤 武夫事務局長 矢澤 孝二所在地 電話 事業内容 表彰事業、試験研究助成事業、国際会議 URL 東京都目黒区中根2-3-1903-5731-0709支援事業https://www.kousakukikai-zaidan.or.jp/「第44回工作機械技術振興賞」の授賞式で撮影された記念写真助成事業として3つ事業を行う 定款によると、同財団では大きく分けて、「表彰事業」「試験研究助成事業」「国際会議支援事業」の3つの助成事業を行っている。 「表彰事業」では、学会など公的機関で発表された工作機械技術に関する論文の中から、学会からの推薦を受け、新規性・独創性・産業への応用性などを勘案し、優秀な論文に対し、工作機械技術振興賞として「論文賞」「奨励賞」の2種の賞を贈り、表彰している。また、財団設立40年周年にあたる、「第40次(2019年度)募集」からは、工作機械技術に関わる人材の確保と指導、育成に優れた活動を行っている個人に対する「人材育成賞」を2年ごとに実施している。 「試験研究助成事業」では、大学、試験研究機関の学者、研究者などが行う工作機械技術に関する研究試験の促進をはかるため、工作機械の発展進歩に大きな貢献が期待できる試験研究に対して助成金を交付。また、その研究成果は試験研究報告書として工作機械技術関係者に配布している。試験研究助成事業は、大学や高等専門学校、公的研究機関および企業の研究者などを対象に公募する「試験研究A」。博士後期課程に在学中あるいは同課程に進学予定の学生を対象に公募する「試験研究B」。財団の透明性の重視から企業色を消す 矢澤孝二事務局長は「設立当初から、当財団は牧野フライス製作所とはインディペンデント(独立した別組織)という考えで、財団名称にも企業名は入っていません。採択された研究者の中には、表彰式・助成目録贈呈式で初めてそうした背景を知ったという方も多いようです。また、研究助成の選考を行う選考委員には、牧野フライス製作所と利害関係のある人物は専任されません。在任中に利害関係が発生した場合には委員を降りていただくことになっており、財団の活動には牧野フライス製作所もコンプライアンスを重視していただいています」という。 工作機械が担う役割は、地味ではあるが経済活動には欠かせない。それだけに同財団の存在意義が、これからますます重要になっていくものと思われる。 今回取材を受けた理由について、箕澤専務理事は「助成対象領域は異なっていても、『日本のものづくり力の向上』という目的は一致しているさまざまな財団があります。天田財団さんもそのひとつです。これからは財団同士の横の連携を活発にして、助成プログラム、採択した助成案件の目的を共有して助成範囲、金額、期間を補完する必要性も検討していきたい」と語っている。

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