近年、日本においても民間の助成型財団の設立がさかんとなっている中で、公益財団法人天田財団は塑性加工およびレーザプロセッシングの研究分野でさまざまな助成活動を行っている。1987年の財団創立から36年間の累計助成件数は2,234件、累計助成総額は39億8,807万円となっている(2024年3月段階)。 小誌では今号から、当財団のような助成事業を主体に活動する公益財団法人にうかがい、財団発足の経緯やどんな助成プログラムで活動しているかなどを紹介する「助成型公益財団巡り」を連載する。 第1回は「公益財団法人工作機械技術振興財団」でお話をうかがった。高が世界トップとなり、2009年に中国に抜かれるまで世界1位を維持し続けた。 そんな中で、日本の工作機械産業の成長と発展を支えるため、工作機械技術の研究・開発を行う研究者への支援を行う、助成型財団の設立を牧野常造氏が中心となって計画。通商産業省(現・経済産業省)、機械振興協会、日本工作機械工業会などの支援を受けて、1979年7月に設立された。16公益財団法人工作機械技術振興財団の箕澤武夫専務理事(中央)、矢澤孝二事務局長(左)、事務局の高嶋恵美子さん(右)1979年7月に業界の振興を目的に設立 公益財団法人工作機械技術振興財団は、工作機械に関する学術および科学技術の振興を目的として、㈱牧野フライス製作所の創業者・牧野常造氏らの寄付により、1979年7月17日に通商産業大臣(現・経済産業大臣)の許可を得て、「財団法人工作機械技術振興財団」として設立された。2012年には内閣総理大臣から公益法人への移行認定を受け、同年5月1日より「公益財団法人工作機械技術振興財団」となった。業界の背景と財団設立の経緯 1960年代に入って日本の工作機械産業は成長期に入り、欧米のコピーから脱却、日本発のオリジナル技術が発展した。1962〜1963年にはNC(数値制御)工作機械が、1965年にマシニングセンタが発表され、産業界は大きく発展した。そして、NC工作機械分野で日本は、圧倒的な競争力を持つようになった。1982年には日本の工作機械生産切りくずを出す工作機械分野を対象に 箕澤武夫専務理事は同財団の成り立ちについて、次のように説明している。 「財団設立の目的は主に、切りくずを出す切削・研削・電気加工・レーザ加工などの工作機械の開発、生産、利用に関する基礎的・応用的な技術の開発に係る助成を通じて、工作機械の品質・性能の向上、生産および利用の改善や合理化にたずさわる研究者・技術者の養成に寄与することにより、機械産業の健全な発展に資し、国民経済の発展に寄与すること、としています」。 「設立に際しては、㈱牧野フライス製作所・牧野常造氏が保有していた同社の株式、89万3,000株を財団に寄付。賛同者からの寄付金もあり、それらの浄財を基本財産に、株式配当金を資金として助成事業を行っています。景気の変動による業績の変動がありますが、株式配当金をメインに年間7,000万〜8,000万円の予算で助成事業を行っています」。マザーマシンとして担う役割は大きい 「最近は気候変動対策、新型コロナウイルスなどの感染公益財団法人 工作機械技術振興財団工作機械技術の高度化、工作機械産業の発展に寄与する助成プログラムを実施
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