❶❶❷❷❶材料の物性値(引張強度、曲げ強度、圧縮強度など)をコンピュータ制御により自動的に測定する万能精密測定装置/❷透過電子顕微鏡用の薄膜試料を簡便に作成できるイオンスライサー(日本電子製)/❸電子プローブマイクロアナライザー❸❸のエンジンなどに搭載され、燃料消費量、ノイズ、窒素酸化物排出量を低減するなど、優れた環境効果を挙げている。が特性を決める』という哲学に基づき、材料強度学、転位論に関する研究ではあるものの、平衡論・速度論などのデータサイエンスをベースとした組織制御を実行します。目的を果たすために最適な組織形態をみずから設計するという研究デザインは、本分野の研究では特徴的です」と山形助教は語っている。2. TiAl基合金の室温延性がなぜ、塑性変形領域における破断に至るまでの大部分ではなく、塑性変形開始直後のわずかな領域における加工硬化現象によって決定されるのか、そのメカニズムを明らかにし、さらなる高延性化に向けた指針を提案すること。3. 上記の加工硬化現象と延性の特異な関係性の解明を通じて、複相材料における加工硬化現象の基礎学理を構築すること。9SIPでも取り上げられるTiAl基合金 日本でも内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)で、「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」の一環として「高性能TiAl基合金動翼の粉末造形プロセス開発と基盤技術構築」というテーマで東京工業大学、大阪大学、民間企業が参加して研究が進められていた。現在はSIPのテーマから外れたが、参加企業や大学で研究は続いており、山形助教も参画している。 この研究では世界に類のない強度と靭性を有する新規TiAl合金を粉末プロセスで製造することを目標としており、現在もTiAl合金の高性能化、生産性の向上に向けた研究を続けている。 しかし、本合金は一般的に硬くてもろいとされている金属間化合物を基とした材料であり、構造材料でありながら室温における延性はわずか1%にも満たない。この甚だしい延性の乏しさが本合金の加工性を著しく困難にしており、生産歩留り性が低下、ほかの複雑形状部材への適用を阻害している。データサイエンスを活用して組織制御を実行 山形助教は以前の研究で、データサイエンスによる知見に基づきTiAl基合金の基本組織であるα2-Ti3Al/γ-TiAlラメラ組織の粒界をβ-Ti/γ層状組織にて被覆することで、強度を低下させることなく、向上させたうえで、このTiAl基合金に1%以上の室温延性を付与することに成功した。この研究を遂行する中で山形助教は、延性の大小にかかわらず、TiAl基合金の塑性変形能は破断に至る手前ではなく、むしろ降伏後の塑性変形開始後わずか0〜0.2%の領域における加工硬化挙動と密接な関係にある可能性を見出すことに成功した。 「本研究では、合金組成や熱処理条件ではなく、『組織研究の目的は3つ 本研究が目的とするのは以下の3点となっている。1. TiAl基合金のβ/γ異相界面近傍における塑性変形挙動を精緻に調査し、加工硬化現象発現の機構を明らかにすること。4名のスタッフで16名の院生、学生指導 山形助教が所属する千葉大学大学院 融合理工学府の糸井研究室は糸井貴臣教授、山形助教、民間企業から招いた客員教授1名、技術職員1名の4名で、社会人博士課程の4年生1名、博士前期課程の院生9名、学部4年生6名の合わせて16名の学生の研究指導、教育を行っている。2023年4月に赴任した山形助教も現在は博士前期課程の院生1名、学部生1名の指導に携わるほか、研究室の運営などの業務もあり、自身の研究に費やせる時間が制限されている。しかし、院生・学生の教育指導の一環として、自身の研究の実験などを行う機会もあり、赴任して間もない大学の環境に慣れる意味でも日々忙しく教育・研究にまい進している。
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