❶❶❷❷❶パルスレーザ、ガルバノミラーなどを組み合わせた独自のレーザ加工系/❷パルスレーザを使い作製されたTHz光学素子/❸独自に作成したTHz帯撮像素子❸❸ムである『ミニマルIoTデバイス実証ラボ』が設置されるなど、世界をリードするスマート製造計測技術の研究開発と、日本の産業競争力の強化に貢献しています」。 「4Dビジュアルセンシング研究チームにはチーム長を含めて6名の研究員が所属しています。現在は日本が進めるグリーン成長戦略、国土強靭化プロジェクト、先端半導体製造技術開発事業などで求められている“可視化”による評価・設計・予測の革新に対応して『潜傷』『破壊挙動』『機械的挙動』『品質予測』など見えないものを“見える化”するセンシング技術の開発に取り組んでいます。開発したセンシング技術により半導体製造事業における『自動判断』『測れない場所の可視化』『予測・知覚共有』に貢献することを目指しています」(鈴木主任研究員)。キャン光学系を構築し、アルミ板の表面熱変性加工に挑戦します。事前検討の結果、微細隆起構造はフルエンスが低くても高くてもできず(低いと熱変性が発生せず、高いと完全に溶解して滑らかになるかボロボロの脆い構造になる)、フルエンスが同じであってもスポット径・オーバーラップ率によりまったく異なる隆起構造になることがわかりました」。 「そこで、構造材料として使用されているアルミ板に対して微細隆起構造を形成する加工条件を明らかにするとともに、隆起構造が接着・接合に与える影響の解明、および強度増加を試みます。研究成果は船舶・自動車・航空宇宙機器における接着強度増加に直結する技術であり、コストパフォーマンスの高いナノ秒パルスレーザの技術導入・普及展開を強く推進することが期待されます」(鈴木主任研究員)。15接着・接合の強度を上げる技術の研究 今回、採択された研究テーマは「ナノ秒パルスを利用した金属表面熱変性による接着強度増加」となっている。 「2021年に脱炭素化に向けた国家戦略として『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』が策定されました。このうち、マテリアル――特に金属素材においてはマルチマテリアル化に不可欠な接着・接合技術の開発が重点課題のひとつとして明記されており、接着の強度や寿命、耐環境性を向上させる技術の開発が産官学において取り組まれています。接着・接合の強度を上げる技術としては、プラズマによる金属表面親水化や、極短パルスレーザによるグリッド構造加工で接着強度を増加させる技術が報告されており、レーザプロセッシングによる金属表面処理は革新的な金属素材を産み出す強力な技術であると考えられます」。 「本研究では低出力ナノ秒パルスレーザを利用した接着・接合技術の開発に挑戦します。ナノ秒パルスレーザはフェムト秒パルスレーザと比べて、コスト面で技術導入が容易なうえ、熱変性を利用したナノ〜マイクロサイズの隆起構造を形成することができます。微細加工用途では避けるべきこの熱影響領域こそが接着・接合にとって重要であり、微細隆起構造に接着剤が入り込んだ際のアンカー効果で高い接着強度を実現することが可能になります」。 「本研究ではナノ秒パルスレーザによる集光光学系・スナノ秒パルスレーザの技術導入・普及展開 「本研究の特色は、レーザプロセッシング技術の導入推進を目的とし、安価な低出力ナノ秒パルスレーザによる応用実証を含めた研究開発に取り組む点にあります。『レーザアブレーション』は、レーザになじみのない他領域の研究者からは数千万円もする高価な装置や特殊な技術が必要で、ハードルが高いと思われがちです。しかし、実際には100万円前後の安価な低出力ナノ秒パルスレーザでもリソグラフィやインクジェットといったほかの加工手法ではできない微細光加工を行うことが可能で、多くの研究成果につなげることができます」。 「若手研究者が技術導入を検討するうえで『100万円』という科研費(若手研究)や民間助成金などで調達できる価格帯であることはたいへん重要です。低出力ナノ秒パルスレーザで有力な実用例を示すことができれば、幅広い研究領域の若手研究者のレーザプロセッシング技術の導入につながる――その結果、技術の相互交流により互いの研究領域が活性化されると考えています。このような考えから本研究ではナノ秒パルスレーザの特徴である熱影響領域を生かした表面加工および産業的な有用性を示す応用実証に挑戦することで、より多くの人がレーザプロセッシング技術を知る・触れる・使うきっかけになることを目指しています」(鈴木主任研究員)。
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