東京大学生産技術研究所のキム・ビョンギ特任助教ました。大学の研究者は基礎となる物理を探求しつつ、新たな知見を生み出すことでイノベーションに寄与することが任務であると考えてきました。研究設備が充実している東京大学 生産技術研究所で研究をしてみたかったので、特任助教の公募を知りすぐに応募しました。学生の教育指導や、研究室の設備管理の補助などマネジメント的な仕事に関わりながら、自分の研究にも取り組むことができるので、充実した研究生活を送っています」。 「レーザ加工現象に関する研究で東京工業大学の学位を取得したあとは、KAISTでフェムト秒レーザの技術を学びました。東京大学ではナノ構造における光とフォノンの物理に関する研究まで拡張し、視野を広げて研究を深めることを心がけています」。 「さまざまな光・電子デバイスにおける放熱問題やシステム内の熱エネルギーの有効利用、熱電環境発電への期待から、高度な熱マネジメント技術への関心が高まっています。所属する野村政宏教授の研究室ではそうした時代のニーズに対応し、光学実験、解析、デバイス作製を一貫して実行できる研究者になることを目指しています。将来的にはフォトニクスとフォノニクス分野をリードし、国際的に活躍できる研究者になりたいと思っています」(キム特任助教)。10研究室訪問4東京大学 生産技術研究所キム・ビョンギ(Byunggi KIM) 特任助教大学から日本でレーザによる微細加工を研究 東京大学 生産技術研究所 情報・エレクトロニクス系部門のキム・ビョンギ(Byunggi KIM)特任助教の研究テーマ「フェムト秒レーザ誘起表面周期構造を用いた薄膜熱伝導制御技術の創成」が、天田財団の2022年度「奨励研究助成(若手研究者)」にレーザプロセッシング分野で採択された。 キム助教は2009年に国費留学生として東京工業大学 工学部に入学。2013年4月から同大学大学院の伏信一慶教授のもとでナノ秒レーザを使った加工の研究を行う中で博士前期課程、博士後期課程を経て、2017年に博士(工学)となった。その後いったんは帰国し、2017年5月から2021年9月までの約4年間は韓国科学技術院(KAIST)機械技術研究所の博士研究員として、フェムト秒レーザなどの短パルスレーザを活用した微細加工の研究を行った。2021年10月からは再度来日し、現職である東京大学 生産技術研究所の特任助教に就任した。国際的に活躍できる研究者を目指す 「光と材料の相互作用に関する物理に興味を持ち、10年ちかくナノ秒レーザ、フェムト秒レーザなどを用いて微細加工、精密計測、非線形光学現象に関する研究を行ってきフォノンエンジニアリングを活用 固体中の熱伝導を担うフォノンは、その強い拡散的性質から制御が難しいため、固体熱制御技術は光および電子制御技術と比べて発展の余地が多く残されている。近年、ナノ構造を利用することで本来は材料由来である熱伝導率の人工的制御や熱流制御が可能になっており、フォノンエンジニアリングというナノスケール特有の熱輸送特性を探求し、その知見を活用した新しい熱制御技術の開発もはじまっている。 野村研究室では科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業や未来社会創造事業による産学連携により、高効率なシリコン熱電発電デバイスと熱電環境発電を利用した、エネルギー自立型センシングデバイスの開発など、エネチャンスがあればチャレンジする気持ちが大切エネルギー自立型センシングデバイスの開発に貢献
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