天田財団ニュース No14
8/20

実験に使用するワイヤ・レーザDED装置の前に立つ渡辺義見教授8研究室訪問3名古屋工業大学大学院 工学研究科・工学専攻渡辺 義見 教授強靱な新たな製造プロセスを整備する 名古屋工業大学大学院 工学研究科・工学専攻の渡辺義見教授の研究テーマ「ヘテロ凝固核添加によるレーザ式指向性エネルギー堆積法の高精度プロセッシング」が、天田財団の2022年度「重点研究開発助成 課題研究」(レーザプロセッシング)に採択された。 感染症対策としてテレワークが推奨されたことで、在宅で作成したCADデータを元に、最小限のオペレータの出勤だけで製品製造が行える「遠隔操作3Dプリンティング」が新しいものづくりのモデルとして注目されている。 ものづくりにおける4M(Man、Machine、Material、Method)のひとつである材料(Material)の性質は、材料の成分と材料の組織によって決まり、材料の組織は材料の成分と製造プロセスによって決まる。強靱な新たな製造プロセスを整備することにより、資源利用を最小にとどめながら、同一以上の性質を発現させることができる。これを「ヘテロ凝固核」の添加により、3Dプリンティングで実現するのが本研究の目的となっている。ヘテロ凝固核の添加により強度向上のみならず、欠陥抑制が可能となれば、SDGsの目標12にある「つくる責任」を果たすことができる。ワイヤ・レーザDEDが実用段階に 3Dプリンティングは、ものづくりのあり方を根本的に変えうる画期的な製造方法だが、日本の取り組みの遅れは周知の事実であり、特に金属造形の遅れが目立っている。 主な金属3Dプリンティングとして、粉末床溶融結合(PBF)式と指向性エネルギー堆積(DED)式があり、それぞれレーザや電子ビームなどを熱源としたプロセッシングが開発されている。 市場への普及で先行するPBFに対してDEDは導入期といえる。DED方式では材料として粉末もしくはワイヤが選択できるが、粉末は材料管理が重要で、高コストが課題。ワイヤ式DEDとしてはアークを熱源としたものもあるが、入熱制御が難しく、造形性に課題がある。 レーザを熱源としたワイヤ式DEDは造形速度が速く、素材が安価で、アークよりも高精度な造形が可能という利点がある。しかし、一般的にレーザの照射タイミングやワイヤの供給タイミングと軸速度を同期させた制御は難しく、造形プロセスが破綻しやすい。そのため、研究開発としての利用例が多い。 最近、レーザ加工機やワイヤ放電加工機、コンピュータ数値制御(CNC)の製品実績の強みを活かして、三菱電機からワイヤ・レーザDED装置が製品化されている。ワイヤ送給とレーザ出力と駆動軸とをCNCを用いて協調制御する。この独自の制御技術により、造形プロセスが破綻しやすいというワイヤ・レーザDEDの課題を解決し、実用化に成功した。ヘテロ凝固理論を金属3Dプリンティングに適用する PBFやDEDによる金属3Dプリンティングは、素過程的には局所的な溶融・凝固を繰り返すプロセスであり、これは鋳造や溶接と同一の物理現象である。したがって、日本が得意とするこれらの分野で培われた技術や知見を金属3Dレーザ式指向性エネルギー堆積法の高精度プロセッシング」「ヘテロ凝固核添加によるワイヤ・レーザDEDで高造形性の実現と造形体の高強度化を実現する

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る