❶❶❶急速冷却可能な雰囲気調整熱処理炉装置(自作)/❷原子分解能分析電子顕微鏡/❸高温引張試験機❷❷❸❸一般的なEBM材に比して破断延性は8倍、引張強度は40%向上した。さらにEBM-HIP造形材を凌ぐ引張特性が得られた。また、クリープ特性はEBM材を上回り、困難とされたSLM造形も予熱システムの導入により可能となり、優れた特性が得られた。本研究では、これらの結果を参考にSLM造形データをDED造形に活用する。し、ホットクラック感受性を低下させ材料特性の異方性を低減させるために、超音波技術の利用を試みる。 造形中の温度振幅および冷却速度が残留応力と凝固割れに大きく影響するが、造形中の溶融池付近の温度を直接計測することは難しい。そこで、有限要素法(COMSOL Multiphysics)によるマクロ溶融凝固シミュレーションにより、予備加熱の有無における溶融池付近の温度分布と温度履歴を求め、さらに、温度勾配と冷却速度を解析的に求める。σ=EαΔTを用いて熱残留応力を求め、凝固割れの生成との関係を調べる。5SLM造形データをDED造形に活用 本研究はTiAl4822のDED造形法に関して、①酸素混入に対してロバストな粉末、②予熱、③超音波付与、④溶融凝固シミュレーションおよび⑤造形パラメータの機械学習と、①〜⑤の要素技術を複合的に用いて、DED造形材の材料特性を基材(EBM材)の特性と同等に向上させることで、航空機エンジン用タービン翼補修技術の実用化を目的とする。 TiAl4822合金粉末の作製には、実績のあるドイツ・GfE社のTiAl4822の粉末を用いる。ノズルから合金粉末を噴射すると同時にレーザ光を照射することで、合金粉末を溶融池に供給・凝固させて、溶融・積層して造形するため、パウダーベッド方式に比べ造形時間が圧倒的に短い。 また、比較的大物部品の造形や既存部品に積層し、形状付加することが可能である。溶融ノズル、またはステージを移動させながら部品形状を描き、レーザ出力が大きいため高速造形が可能になる。レーザを造形部分に同時に照射し、既存製品の補修や、比較的単純な形状で大型の造形品の製造に向いている。 本研究では、割れ防止を目的として900℃高温仕様の高周波加熱を用いた予備加熱システムを用いる計画である。ドレスデン工科大学(フランフォーファーIWS)と連携 本研究はドレスデン工科大学のMarquardt博士らとの国際的な連携で行う計画であり、材料の結晶粒を微細化台湾国立清華大学とも連携し機械学習を適用 これまでは、造形条件の最適化を試行錯誤で行ってきたが、DED造形において機械学習を適用する。プログラム言語にはPythonを使用し、プラットフォームはAnacondaのJupyterを使用する。この方法を用いて、台湾国立清華大学の葉教授は、選択的レーザ溶融法で欠陥のない超硬合金WC合金の造形に成功している。本研究でも葉教授の協力を得て、TiAl4822のDED法に展開する。 本研究は①本材料の延性−脆性遷移温度が700℃近傍にあることを考え、十分な延性が発現する温度域に高周波加熱を用いた予熱を基材に付与し割れを防ぎ、②基材に超音波を付与し結晶粒を微細化し、ホットクラック感受性を低下させ、等軸化により材料特性の異方性を低減させる。 高周波加熱と超音波付与を複合的に適用したTiAlタービンブレードのDED法に関する研究は、世界的に類がない。また、次世代航空機用エンジン「LEAP」に搭載されるTiAlタービンブレードの量産サプライヤーであるAeroEdge㈱との共同研究で、実機適用を見据えている。さらに、レーザ積層造形において国際的なトップランナーであるドレスデン工科大学(フランフォーファーIWS)との共同研究で、ここに台湾国立清華大学の葉教授も加わることで、「日独台」の国際的研究業績が期待できる。
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