天田財団ニュース No14
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筧教授(下段・右から2番目)と「航空宇宙材料研究室」のメンバー力も10%向上した。 TiAl合金の適用は、エンジン自体の軽量化のほか、エンジンを支える構造材料の軽量化にもつながり、燃費向上とCO2削減に効果があるため、SDGsの達成にも貢献する。その一方、タービン翼は高温の燃焼ガスに曝され、静翼では熱応力によるき裂や酸化による損傷、動翼では先端部にエロージョンや酸化による減肉が生じる。現在までTiAlタービン翼の補修技術は確立されておらず、損傷が生じると廃棄されている。 筧教授は共同研究者の水田客員研究員(AeroEdge㈱)らとともに、DMG森精機のLASERTEC 65 3D hybridを使用してTiAl4822材の指向性エネルギー堆積造形(DED:Directed Energy Deposition)を行ったが、亀裂が発生することを確認した。熱応力による亀裂発生を抑制するためには、本材料の延性−脆性遷移温度が700℃近傍にあることを考え、十分な延性が発現する温度域に加熱しながら積層造形することが必要と考えられる。4東京都立大学 システムデザイン研究科筧 幸次 教授国際的にアピールできる研究を目指す 東京都立大学 システムデザイン研究科 機械システム工■■■幸次教授の研究テーマ「指向性エネルギー堆積学域の筧法を用いたTiAl4822タービンブレードの補修技術開発」が、天田財団の2022年度「重点研究開発助成 課題研究」(レーザプロセッシング)に採択された。 筧教授の「航空宇宙材料研究室」では、航空・宇宙分野における先端構造材料の信頼性向上をテーマに、国内外の研究機関と連携して、国際的にアピールできる研究を目指している。TiAlタービン翼の補修技術確立を目指す 本研究は、指向性エネルギー堆積法を用いたTiAl4822タービンブレードの補修技術開発。TiAl(チタンアルミ)合金は、航空機エンジンの主力合金であるNi合金に比べ比重は約半分で、高温域での比強度も十分である。 最新のGEnxエンジンやLEAPエンジン(エアバスA320neo、ボーイング737MAXに搭載)で、TiAl4822(Ti-48Al-2Cr-2Nb, at%)タービン翼の搭載が進んでいる。GE Catalyst turbopropエンジンではTiAlによる軽量化と、800部品を12部品のコンポーネントにする積層造形の適用で、軽量・高効率化を実現。燃費が20%向上し、出先駆的SLMシステムで実験 筧教授らは、亀裂が発生するため困難とされるTiAl4822のSLM造形を、ドイツ・AM Metals社の協力を得て先駆的SLMシステムで試み、TiAl合金の一般的な積層造形法であるEBM(Electron Beam Melting)を用いた材料を上まわる強度特性を得た。 先駆的SLMシステムとは、TiAl合金を造形するために、ベースプレート加熱に加え、VCSEL(垂直共振器型面発光レーザ)で表面加熱するSLM造形法で、ドイツ・EOS社の金属プリンターM290をベースに、高温予備加熱ユニット、造形室の温度制御、不活性ガス濃度最適化システム、造形プロセスモニタリング機能を新たに追加したシステム。半導体面発光レーザにより試料表面を900℃、ベースプレートを750℃に加熱することで、冷却速度および温度振幅を低減し、割れおよび残留応力を抑制した。 このシステムを用いてTiAl4822の造形を行い、平均粒径6μmの均一微細粒を得ることができ、TiAl積層造形で指向性エネルギー堆積法を用いたTiAl4822タービン翼の補修技術開発実機適用を見据えた量産サプライヤーとの共同研究

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