引張試験装置の前に立つ梶野智史主任研究員な利点を最大限に活かすために、スライドモーションの設計指針、モーション設計をサポートするシステムの構築が望まれている。 本研究では、工程数削減などを実現するサーボプレスモーションを究明し、AI技術を活用することでモーション設計を効率的にサポートするモーション設計支援ツールの開発を目指す。12研究室訪問5産業技術総合研究所 製造技術研究部門梶野 智史 主任研究員環境負荷低減に貢献するサーボプレスのモーション設計支援ツールの開発 産業技術総合研究所(産総研)製造技術研究部門 素形材加工研究グループの梶野智史主任研究員の研究テーマ「工程数削減を実現するサーボプレスモーションの究明、およびモーション設計支援ツールの開発」が、天田財団の2022年度「重点研究開発助成 課題研究」(塑性加工)に採択された。 近年は、環境負荷を低減する製造技術のひとつとしてサーボプレスへの関心が高まっている。サーボプレスは電力消費量が少なく、加工音が静かで、オイル使用量は従来のメカプレスの67%程度と省資源。スライドモーションを自由にコントロールすることができ、最小限のストローク量による生産性向上、材料と金型のソフトタッチや低速加工による成形性の向上、金型の長寿命化、加工中の潤滑油の再塗布などが可能となる。 しかし、スライドモーションの設計は、トライアンドエラーの繰り返しによる手探りの部分が多いのが実情である。また、モーションと加工特性の関係を体系的に整理したデータベースも十分に整備されていないため、モーション設計時に参照するデータも不足している。サーボプレスが有する多様推奨モーション予測のAIモデルを構築する 現時点では、AIもしくはIoTなどの情報技術をプレス機に適用した例として、プレス機の稼働率管理や予防保全などに対応するソフトウエアが開発されている。しかし、加工プロセスそのものに示唆を与えるような予測システムの構築には至っていない。 本研究で開発するモーション設計支援ツールの活用により、工程数を削減させるモーション設計にかかるコストや時間の低減、トライアンドエラーで生じる不良品の大幅な削減が期待できると考えられる。 なお、モーション設計支援ツールの開発に関連し、推奨モーション予測のAIモデルの構築、AIモデルに利用するパラメータの設定などの研究は、産業技術総合研究所 素形材加工研究グループの権藤詩織研究員(現在ドイツ留学中)が共同研究者として協力する。権藤研究員は梶野主任研究員にとって、母校である早稲田大学 基幹理工学部 機械科学・航空学科の浅川基男名誉教授の研究室の後輩でもある。鍛造・プレス加工のデータベース構築に携わる 梶野主任研究員は早稲田大学 理工学術院の助手を経て、2007年に産業技術総合研究所の研究員となり、デジタルものづくり研究センターに入所。そこで、NEDOのプロジェクト「ものづくり・IT融合化推進技術の開発」に参画した。 このプロジェクトは鍛造・鋳造・切削・めっきなど15の製造技術分野のデータベースの構築が目的であり、梶野主任研究員はそのうちの鍛造・プレス加工のデータベース構築工程数削減を実現するサーボプレスのモーション設計支援ツールの開発推奨モーション予測のAIモデルを構築・活用する
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