天田財団ニュース No13
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❶❶❷❷井上研究室のメンバーの集合写真❸❸❶試作の真空蒸留装置/❷サーボプレスで押出加工を行う際に使用するコンテナ/❸高純度マグネシウム凝縮物(右)と押出材(中央)Mg-Zn合金板材は高強度・高耐食性が実現可能であることがわかってきました。そこで、当研究室では各元素間の蒸気圧差を利用した真空蒸留法、および押出加工法により高強度・高耐食性Mg-Zn合金板材の作製の検討を行ってきました」。 「真空蒸留法で得られた多孔質な高純度マグネシウム凝縮物のまま押出加工を行い、高純度マグネシウム押出材を製作。特性の検討を行うため、2013年度には㈱アマダ製のデジタル電動サーボプレスSDE-8018を購入し、押出加工への適用を検討しました。同じく2013年度に天田財団の研究開発助成を受けて『マグネシウム合金の気相-固相法による高純度広幅リサイクル材の作製』の研究を行いました」。 「2017年度の研究開発助成で採択された『サーボプレスを用いた押出加工・圧延加工による超高純度マグネシウム板材の作製』では、サーボプレスを用いた押出加工・圧延加工により純度99.995%以上の超高純度マグネシウム板材を作製し、特性を確認しました。これまでのところ私の研究室以外では、サーボプレスを用いた押出加工による高純度・高耐食性Mg-Zn合金板材の作製の系統的な実験、研究は行われていません」。 「今回の研究テーマ『サーボプレスを用いた押出加工による高強度・高耐食性Mg-Zn合金板材の作製』では、①押出加工のための真空蒸留法による高純度Mg-Zn合金凝縮物の作製、②サーボプレスを用いた押出加工による高強度・高耐食性Mg-Zn合金板材の作製、③得られた高強度・高耐食性Mg-Zn合金板材の特性調査――の3点について明らかにしたいと考えています」。あり、溶解鋳造を行わずサーボプレスによる押出加工を行うことにより、燃焼のおそれがなく、不純物の混入がなく、板材を作製できるという。多彩なモーションコントロールが可能なサーボプレスを用いてさまざまなモーションを押出加工に使用することにより、これまでの油圧プレスによる押出加工と比べ、押出速度を変え、表面の清浄な押出材の作製が期待できる。 また、真空蒸留の原料に亜鉛を含むマグネシウム合金を用いることにより、高純度Mg-Zn合金を回収でき、押出加工を行うことにより、強度の向上(引張り強さ200MPa以上)も期待できる。 真空蒸留法を用いたマグネシウムの精製に関する報告例はこれまでにもいくつかあり、製錬法としても用いられている。しかし、真空蒸留法と押出加工を組み合わせた報告例は、国内外で井上教授の研究室以外にはない。 また、近年はサーボプレスがマグネシウム合金の絞り加工、曲げ加工などに積極的に用いられるようになってきた。マグネシウム合金の押出加工の報告例も国内外で増えている。しかし、サーボプレスを用いた押出加工の系統的な報告例は井上教授の研究室以外にない。それだけに今後の研究成果が期待される。 富山県はもともとアルミサッシなど軽金属を使った産業がさかんな地域である。それだけに井上教授の研究にも熱が入るようだ。9報告例がほとんどない珍しい研究 本研究では、各元素間の蒸気圧差を利用した真空蒸留法により、高い回収率で、高品質(高耐食性・高延性)な超高純度マグネシウム凝縮物の回収が可能である。回収部の形状を変えることにより、溶解鋳造せずに押出加工を行うことができる。 さらにマグネシムは大気中で溶解すると燃焼のおそれが

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