新居浜工業高等専門学校・真中俊明准教授6研究室訪問2新居浜工業高等専門学校 環境材料工学科真中 俊明 准教授「アルミニウム材料中の水素挙動」を研究 新居浜工業高等専門学校(以下、新居浜高専) 環境材料工学科の真中俊明准教授は、大学在学中から一貫して「アルミニウム材料中の水素挙動」についての研究を行っている。 2012年4月〜2014年3月には茨城大学大学院 理工学研究科 博士前期課程 機械工学専攻で、超塑性Zn-Al 共析合金のミクロ組織制御の研究に取り組んだ。熱間圧延プロセスによる組織制御を行い、結晶粒微細化過程と引張特性の関係を調査。国際会議「ICSAM2012」では「Best Poster Award」、日本機械学会からは「日本機械学会三浦賞」を受賞した。 2014年4月〜2017年3月には同大学院 博士後期課程 物質科学専攻でアルミニウム合金の水素脆化機構の解明を目指し、アルミニウム材料中の水素挙動を研究した。 2017年4月からは新居浜工業高等専門学校 環境材料工学科の助教に着任。アルミニウム合金の水素挙動解析を発展させて水素脆化機構の解明に引き続き取り組んでいる。2020年4月には同学科の講師となり、2022年4月には准教授へと昇任した。アルミニウム合金の力学特性を改善 真中准教授の研究テーマ「晶出第二相粒子の分布状態制御によるアルミニウム合金の力学特性改善」が、天田財団の2019度「奨励研究助成(若手研究者枠)」の塑性加工分野に採択された。 今回の研究は溶体化後も残存する晶出第二相の分布状態を制御することで、アルミニウム合金の力学特性を改善することを目的としている。具体的にはステップ溶体化処理と冷間圧延を行う。前者では段階的に昇温することで共晶溶解を生じさせることなく通常の条件よりも高温で溶体化処理を行う。これにより溶質元素量を増やすことで時効硬化による強化量が増大するうえ、破壊の起点となる粒子のサイズおよび量を減少させることで延性の向上を狙う。さらに冷間圧延を施すことで、残存する第二相粒子の微細化、結晶粒形状および水素ミクロポアの制御を行い、力学特性の向上を目指している。 真中准教授は「研究は計画どおりに進んでいますが、なかなか狙ったような結果は出てきません。申請書の段階では熱処理を加えることで性能を変化させようとしましたが、それだけでは十分な成果を得られないので加工を採り入れる必要がありそうです。水素は直接目で見ることができないうえ、材料中に含まれる分量も決して多くはありませんが、材料に大きな影響を与えます――そこをうまく制御することができれば、もっと強いアルミニウム合金を使えるようになるはずです」と、研究の進捗状況と今後に向けた考えについて述べている。環境保全に対応したものづくりができる技術者を育成 真中准教授は現在、環境材料工学科の4年生の担任を担当している。 「環境材料工学科という名前からは何をやっている学科なのかわかりづらいこともあり、PRには結構苦労していま社会基盤を支える金属構造材料の開発には異分野との連携が必須晶出第二相粒子のミクロ組織制御によるアルミニウム合金の力学特性改善
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