天田財団ニュース No13
5/16

型水型5❶❶(a)❶動的液圧バルジ試験装置の概要/❷空気圧で毎秒100mのスピードで弾丸を発射することができる試験措置/❸動的液圧バルジ試験で張り出し成形されたAZ31合金の試験片圧力計貯気槽電磁弁装填室走行管水圧室弾丸(b)模擬的液圧バルジ試験走行管弾丸試験片水面打撃により水中衝撃波発生(c)水中衝撃波水中衝撃波により試験片が高速変形❷❷徳永研究室のメンバーの集合写真❸❸用した。本研究ではその実験結果をさらに推し進め、Mg合金に適用可能な新しい冷間塑性加工プロセスを構築することを目的としている。そのため、本研究では高速変形する金属板材の機械的性質や張り出し成形性を定量評価する手法の提案と、その提案手法を用いたMg合金の冷間塑性変形能延性向上メカニズムについて取り組む計画である。 本研究で使用する衝撃水圧法は、空気圧によって生じさせた高水圧を金属ポンチの代わりとしてプレス成形を行うため、安全性は極めて高い。また、空気圧によって衝撃波強度を幅広くコントロールすることができる。 この試験では金属板材に高速・高圧の水中衝撃波が作用し、金属板材は高ひずみ速度で変形する。動的液圧バルジ試験(室温)後のAZ31合金の外観は、明らかな張り出し変形が生じている。これによって動的液圧バルジ試験により、AZ31合金の張り出し成形性評価に適用することができ、金属板材の動的ひずみ速度域での機械的性質や張り出し成形性評価に広く適用可能な汎用性の高い手法だと考えられる。 徳永教授は新しい塑性加工技術の確立も期待できるとも考えており、「本研究の成果によって材料学や加工学分野の研究や産業発展に貢献できると考えます」と語る。 鹿児島高専からは明治維新の原動力となった先人も常に見上げていた、錦江湾に浮かんだ白煙を上げる桜島を一望できる。そのロケーションの中で教育、研究そして国際交流と獅子奮迅の活躍をされる徳永教授の研究成果が楽しみである。鹿児島高専の機械工学科に赴任 徳永教授は2006年3月に「熱強化ガラスの強度と破壊に関する研究」で宮崎大学大学院 工学研究科 博士後期課程を修了。同年4月から2007年3月までは宇部工業高等専門学校(以下、宇部高専)の助手として「セラミックスを対象とした、金属薄膜を用いたき裂長さ測定法に関する研究」を行った。2007年4月から2009年3月までは宇部高専の助教となり、「Zr基バルク金属ガラスの引張塑性変形挙動、ひずみ速度依存性に関する研究」に携わった。2009年4月から2016年3月までは宇部高専の准教授として「Zr-Cu-Al合金の機械的性質や形状記憶特性に関する研究」を行った。 2016年4月には現在の鹿児島高専の機械工学科に赴任、准教授として「衝撃水圧成形法による金属の塑性および機械的性質に関する研究」に着手した。2019年4月からは国際交流センター長に就任。2021年4月からは教授に昇任した。 「私が熊本出身、妻が宮崎出身で、いずれは九州に戻りたかったということもあり、宇部高専から鹿児島高専に移ってきました」と徳永教授は語っている。「新しい塑性加工技術の確立も期待できる」 今回の助成研究「動的液圧バルジ試験の提案とマグネシウム合金の冷間塑性加工に関する考察」では、環境・エネルギー問題解決につながる新材料として期待されているマグネシウム合金(以下、Mg合金)の冷間塑性加工方法を確立するという目標がある。 Mg合金は冷間塑性変形能がほかの機械・構造用材料に著しく劣るといわれている。すでに、液圧バルジ試験(金属円板の片側から液圧を付与し、張り出し変形を生じさせる試験)を用いてMg合金(AZ31)の張り出し成形性におよぼす試験温度の影響を調査したほかの研究者によって、試験温度が150℃以下では張り出し成形ができないことが報告されている。 徳永教授は高エネルギー速度加工の一種である衝撃水圧法によってMg合金の冷間塑性変形能が向上することを見いだした。すなわち、衝撃水圧法と模擬的液圧バルジ試験を組み合わせた試験(動的液圧バルジ試験と称する)を提案し、市販のAZ31合金の張り出し成形性の評価に適

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る