天田財団ニュース No13
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釧路工業高等専門学校・高橋剛教授(左)とグエン・タン・ソン講師(右)と学生たち更となり、改めて創造工学科スマートメカニクスコース機械工学分野の教授となった。 現在は、グエン・タン・ソン(NGUYEN Thanh Son)講師とともに材料・加工研究室を運営している。研究テーマは金属材料系の研究が多いが、構造解析を駆使した設計的な研究も並行して行っている。12研究室訪問5釧路工業高等専門学校創造工学科高橋 剛 教授 グエン・タン・ソン 講師小型ロケットエンジン部品製造に役立つ研究 釧路工業高等専門学校 創造工学科スマートメカニクスコース 機械工学分野の高橋剛教授の研究テーマ「3D積層造形法と表面改質を活かした小型ロケットエンジンの低コスト化と耐久性向上」が、天田財団の2021年度「一般研究開発助成」に採択された。この研究は宇宙ベンチャー、インターステラテクノロジズ㈱(以下、IST)の助言を受け、将来的には小型ロケットに搭載するロケットエンジン部品製造に役立てたいとの希望を持って進めている。民間企業で17年間の勤務経験 高橋剛教授は、1986年に国内大手重工業メーカーに就職し、造船設計部で4年間、船殻関係の仕事に携わった。1990年に国内大手商用車メーカーに転職し、主として車両系とパワートレイン系のCAE関連の業務に従事。在職中に企業社会人ドクター制度を活用し、2003年に北海道大学工学系研究科機械科学専攻博士課程により学位を取得した。 2006年に職を辞し、釧路工業高等専門学校機械工学科助教授に就任、2010年には准教授を経て教授に昇任した。その後、2016年改組により「創造工学科」に科名が変宇宙ビジネスの発展で商用小型ロケットのニーズが増える ISTとの接点は、ISTから縦吹き実験塔製作の仕事を受注した釧路市内の橋梁・機械メーカー、㈱釧路製作所の取りはからいにより、同学生と教職員合わせて約60名が大樹町のISTを見学したことにはじまる。 これまでの国内の宇宙開発は、H-ⅡAロケットで知られるように国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主導し、大手メーカー数社による共同開発に委ねられ、高性能の大型ロケットの実現を目指してきた。しかしながら大型ロケットは大量輸送ができる反面、打ち上げ頻度が少なく、輸送費も高いという難点があった。そのため打ち上げ機会という点で顧客ニーズに十分応えられない。 その需要を埋めるのが商用小型ロケットであり、そのためには顧客が利用しやすいよう民生品活用による低コスト化と、再使用部品の耐久性向上という相反する2つの課題を両立することが肝要になる。3D積層造形法と表面改質を活かした低コスト化と耐久性向上 再使用部品の中でも、エンジンは打ち上げ頻度が高くなればなるほど耐久性向上が求められる。具体的には、エンジン構造は円筒形状をしており、内筒の内壁は3,000℃の高温燃焼ガスに晒される。一方、外壁には多くの冷却溝が円周上に規則的に配置され、そこを極低温の液体燃料が流れることで内筒の溶損を防いでいる。しかし、冷却性を重視し内筒の肉厚はわずか1〜2㎜であるため、内筒はその温度差から極めて過酷な環境になる。この課題を解決す3D積層造形法と表面改質により小型ロケットエンジン製造の課題を克服「宇宙産業を北海道の基幹産業のひとつに成長させたい」

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