❶❶❷❷島宗研究室のメンバーの集合写真❸❸❶太陽電池に必要な薄膜を形成するスパッタ装置/❷実験で使用するレーザーアニール装置/❸研究室で作成した太陽電池の試作品太陽光のスペクトルを効率よく吸収するのに適している禁制帯幅エネルギーに近い1.5eVを有していことから、これらのポテンシャルを最大限に引き出すことができれば、かなり良いものができるはずです」。 「CZTSは、1988年に信州大学の伊東栄次教授が初めて光起電力を報告し、その後に長岡高専の片桐裕則教授が1996年に初めて太陽電池として動作を確認し、そこからさまざまな機関で研究が行われてきました。私も本校赴任当時に片桐教授にご指導いただき、また片桐教授が築かれた研究資産を活用させていただきました」。 「現在は試作を重ねている段階で、まずは試作品でエネルギー変換効率10%を超えることを目標としています。目標を達成できたら集積化するなど、さらなる高出力化を検討していく必要があります。まずはベース性能を安定して上げることが大事なタスクです」(島宗教授)。県内の企業に対して、長岡高専の教育研究への協力を行う「技術協力会」への加盟を依頼しており、加盟企業からは日々さまざまな技術相談が寄せられる。島宗教授は、in-portを構成する3つのセンターのうち、「オープンソリューションセンター」のセンター長を担っている。 「県内酒造メーカー様からは、IoTを活用した技術相談をいただきました。長岡高専では、AI・IoT・RTといった次世代技術をAIR(空気)のような当たり前の知識・技術として使いこなすことができる次世代エンジニアの育成を目指しており、電気電子システム工学科の学生とともに私が担当させてもらいました」。 「お酒をつくる工程では麹菌を繁殖させる際の温度管理がとても大事で、これまでは職人さんが発酵にかかる数日の間、数時間ごとに汗だくになりながら温度を見に行っていたそうです。この温度モニターの作業負担を『IoT化することで軽減させたい』というご相談でした。古来の技法を継承しながらも新しい酒づくりに取り組まれていて、非常に奥深く、おもしろさを感じました」。 「こういった案件を通じて企業の方々のものづくりやビジネスに対する考え方を知ることができ、大変良い経験をさせてもらっています。工学は実際に人に使ってもらわれる技術を生み出す学問でなければならないと考えています。また、苦労して生み出した技術が人や社会のために貢献するところに技術者としての喜びがあると思っています」(島宗教授)。11「技学イノベーション機器共用ネットワーク」 島宗教授が天田財団の研究助成に採択されたのは2020年――コロナ禍での研究継続にあたっては、長岡技術科学大学を中心とした研究機器相互利用ネットワーク導入実証プログラム「技学イノベーション機器共用ネットワーク」にも助けられたという。 「自前で設備を持ちたいという思いもありますが、維持管理を考えると簡単ではありません。こういった仕組みがあると、めったに使えない高スペックな装置も簡単に利用でき、とても助かっています。製品サンプルができたら、使いたい設備のある学校へ送って、現地サポートスタッフにセッティングしてもらい、機器操作およびデータ転送などを通じてオンラインで分析操作ができます。学生が使用する際も、現地のスタッフが技術的な部分を含めてわかりやすく説明してくれます。この仕組みのおかげもあり、コロナ禍でも研究が停滞するような事態にはなりませんでした」(島宗教授)。地域産学連携と次世代エンジニアの育成 長岡高専には、地域と連携した教育・研究を推進し、地域の活性化を担うイノベーション人材の輩出を目指す「地域創生教育研究推進室」(in-port)がある。in-portでは、
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