長岡工業高等専門学校・島宗洋介教授合物薄膜太陽電池の変換効率改善に関する研究」などを行っている。10研究室訪問4長岡工業高等専門学校 電気電子システム工学科島宗 洋介 教授新しい化合物薄膜太陽電池の実用化を目指す 長岡工業高等専門学校(以下、長岡高専)電気電子システム工学科の島宗洋介教授は、新しい化合物薄膜太陽電池の実用化を目的に、太陽電池を構成する各種薄膜の物性制御とそれらを積層化した高効率太陽電池に関する研究を行っている。 島宗教授は1995年3月に長岡高専 電気工学科を卒業後、1995年4月からは先進的な材料分野の研究を行っている東北大学工学部電気電子情報系に編入し、半導体分野の研究を始めた。1997年4月〜2002年3月には同大学大学院工学研究科で「Ⅳ族半導体への原子層ドーピングに関する研究」などを行い、博士の学位を取得した。 2002年4月からは富士通㈱で「バッチ式低温選択SiGeエピタキシャル成長プロセスの開発」「スーパーコンピュータ『京』用CPUの製造プロセス及び量産技術開発」「28nm node 先端プロセスASICの量産展開」などの研究を行った。しかし、同社は2014年に半導体事業からの撤退を発表。島宗教授は「もっとものづくりに関わる仕事をしたい」との思いから、2015年2月に同社を退社した。 2015年4月からは長岡高専 電気電子システム工学科の准教授として、2022年4月からは教授として「CZTS化レーザーの特性を生かした多結晶成長制御の試み 島宗教授の研究テーマ「レーザーアニールによる光吸収層の局所結晶化プロセスの確立と薄膜太陽電池への応用に関する研究」が、天田財団の2020年度「一般研究開発助成」のレーザプロセッシング分野に採択された。 本研究は、汎用元素からなるCZTS化合物薄膜太陽電池の実用化を目指し、レーザー照射による局所瞬時高温加熱によって高品質CZTS多結晶を実現するプロセスを確立することを目的としている。レーザーの特性を生かして波長・エネルギー・走査間隔・走査速度をパラメーターとすることで、従来の均一加熱による硫化工程では実現できなかったCZTSの多結晶成長制御を試みる。 太陽電池では、光吸収層は太陽光を吸収して電子‐ホールのキャリアを生成する役目を担っている。電子-ホールキャリアの再結合をいかに抑制するかは「太陽光エネルギーをいかにムダなく、電気エネルギーとして取り出せるか」に直結する重要な課題である。多結晶構造においては、結晶粒界を少なく、結晶性を均一に保つことが、キャリア再結合を抑制するために重要と考えられている。 本研究では、従来にない熱処理であるレーザー加熱を採り入れることで、生じる結晶化のメカニズムを明らかにし、より大きな結晶粒径や、より配向のそろった多結晶を実現するための指針を得るとしている。CZTS化合物半導体のメリット 「CZTS化合物半導体のメリットとしては、まず銅・亜鉛・スズ・硫黄という汎用元素により構成されるため、安定的な生産が可能なことが挙げられます。シリコンも汎用元素のひとつですが、CZTSの光吸収係数はシリコンの約100倍あるといわれています。つまり、CZTSはシリコンの1/100の厚さで太陽光を吸収することが可能です。また、CZTSは、レーザーによる多結晶成長制御で高効率薄膜太陽電池の実用化を目指す「研究成果が現場で活用されることが技術者の喜び」
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