東京農工大学大学院・山中晃徳教授後には厳正なテニュア取得審査がありましたが、メンターの先生から研究の方向性や研究室運営に関して助言を受けることができたことは、私のキャリア形成にとって非常にプラスになりました」と述べている。6研究室訪問2東京農工大学大学院 工学研究院先端機械システム部門山中 晃徳 教授テニュアトラック准教授として着任 東京農工大学大学院 工学研究院 先端機械システム部門の山中晃徳教授の研究テーマが、天田財団の2021年度「重点研究開発助成(課題研究)」の塑性加工分野に採択された。 山中教授は2005年3月に神戸大学 機械工学科を卒業後、2005年4月〜2006年9月に神戸大学大学院 博士前期課程、2006年10月〜2008年9月に博士後期課程に在学、早期修了して博士(工学)を取得した。2008年12月〜2012年9月に東京工業大学大学院の助教に着任。2012年10月には東京農工大学 先端機械システム部門の准教授に「テニュアトラック准教授」として着任、2021年4月に同部門の教授に昇任した。 「テニュアトラック制度」(以下、TT制度)とは、公正で透明性の高い選考により採用された若手研究者が、審査を経て、より安定的な職を得る前に、任期付きの雇用形態で自立した研究者として経験を積むことができる仕組みである。 山中教授はTT制度に関して「若い研究者が独立して研究室を運営でき、潤沢な研究資金のもとでみずからが計画した研究に専念できるという点が最大の魅力でした。5年環境問題を意識した研究テーマを設定 山中教授は自身の研究室の研究テーマについて「近年の環境問題を背景に、高燃費の電気自動車や燃料電池車、航空機の開発が進められています。それらの開発には軽量で高強度、高延性の新しい材料を創出することが希求されます。しかし、材料の力学特性は材料内部の複雑なナノ・ミクロ組織形態に強く依存するため、実験的手法のみで材料中のナノ・ミクロ組織形態を明らかにし、力学特性の向上につなげるには膨大な労力と時間が必要になります。当研究室ではフェーズフィールド法と均質化有限要素法を用いて、材料内部のナノ・ミクロ構造がいかにして形成され、それが材料の力学的特性にどのように関係しているのかをコンピュータシミュレーションで一貫して予測できる次世代の材料設計法の開発に取り組んでいます」と説明する。 さらに、「こうした新材料の開発にむけた材料設計指針を得るためには数値シミュレーションの高速化・効率化が必要なため、GPUを用いた超高速計算法に関する研究も推進しています。こうした機械工学、材料科学、計算科学にわたる学際融合領域での研究活動を通じて、総合的な工学センスを有した優れた人材の育成にも力を入れていきたい」と研究を通じた教育についても意気込みを見せる。世のため、人のためになる研究をする 「神戸大学大学院 博士後期課程の学生として冨田佳宏教授に師事し、フェーズフィールド法と有限要素法を用いた鉄鋼材料の固相変態による組織形成のシミュレーション技術に関する研究を行ったことが、現在の自分のポジションにつながっています」。プレス加工におけるデータ同化の適用限界を明らかにする独創的な研究データ同化を用いた材料モデリングとプレス加工シミュレーションの高度化
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