強連成サイバーフィジカルシステムによるせん断加工条件の自動最適化吉田研究室の研究メンバーの集合写真断面および破断面の長さ)を自動評価する。その評価値が収束していなければ、AIが結果分析に応じて新たな実験条件を設定して自動せん断実験を繰り返すことを目指す。 本研究における最適化とは、AIおよび画像解析と、金型およびサーボプレスが一方通行ではなく繰り返し連成動作することで自動決定するものであり、これを「強連成サイバーフィジカルシステム」と定義する。 最適化においては、だれ最小化およびせん断面最大化を達成目標とするが、可能であればバリの定量化ならびに最小化にも取り組む。また、繰り返し自動せん断実験において蓄積される実験ビッグデータを用いて、加工条件と製品品質の関係を感度分析あるいは平行線図によって理解し、それぞれの相関をデータベース化することでせん断加工ナレッジアーカイブを構築する。を社会にいかに還元できるか。加えて、学生に高度な問題解決能力を身につけさせ、いかに社会に貢献できる人財に育てるかです」。 「私の在籍している金型技術研究センターでは『社会実装』や『社会貢献』が重要視されます。いかに大学の運営に貢献するかということも各教員に課せられているので、その点に関しては石川研究室で学んだことは非常に良かったと思っています」(吉田教授)。5「やらなきゃいけないなら、とことん楽しむ」 「私のモットーは『やらなきゃいけないなら、とことん楽しむ』。AIや機械学習を用いた塑性加工の最適化の研究は手数のかかる作業の繰り返しです。少し尻込みする気持ちはありましたが、いざ本気を出してやり始めたら色々なメリットがわかってきました。たとえば今まで学生が1年くらいかけて行っていた仕事を、6時間という短い時間で完了できるようになったこと。それぞれのものがどう影響し合っているかを確認できるのも魅力で、最適値が出せるのはもちろん、問題が発生した際にも、どの辺りで異変が起きているかがわかるので目の付け所が明確になるというのも非常に魅力的でした」。 「現在は熱間鍛造プロセスの自動化と、破壊予測技術に関する実験に着手をしていて、応用事例を出せるところまできています。この技術は熱間加工から冷間加工まで幅広く活用できます」(吉田教授)。社会にどう貢献できるかが問われる 「私の師匠、石川孝司名古屋大学名誉教授の素晴らしいところは研究テーマの多くが企業との共同研究だったことです。今、大学研究者に求められるのは研究で得た知識「ものづくりは大変だけど、おもしろい」 「学生や若い人たちに伝えたいのは『ものづくりは大変だけど、おもしろい』――その一言に尽きると思います。本学の金型技術研究センターでは『金型教育』に力を入れています。4年生には半年ほどかけて(一社)日本金型工業会主催の『学生金型グランプリ』の課題作品を作成してもらいます。完成した作品を持ってきた生徒たちのやりきった表情を見たときに、教員としてのやりがいを強く感じます」。 「学生たちには『どういう設計をしたら現場が楽に効率よく加工できるかを学んだのだから、人に優しいものづくりをするようなエンジニアになってくださいね』といつも伝えています。『ものづくりは大変だけど、おもしろい』ということが、この金型技術研究センターのおかげで伝えられているのかなと思っています」と吉田教授は語っている。
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