天田財団ニュース No12
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岐阜大学・吉田佳典教授4岐阜大学 工学部機械工学科機械コース吉田 佳典 教授民間企業等との連携を強化 岐阜大学 工学部機械工学科 機械コースの吉田佳典教授の研究テーマが、天田財団の2021年度「重点研究開発助成(課題研究)」の塑性加工分野に採択された。 吉田教授は1998年8月に名古屋大学大学院の助手、2009年に岐阜大学 准教授に就任。2011年8月にはドイツ・ドルトムント工科大学の客員研究員として国際共同研究を行った。同年には岐阜大学 金型創成技術研究センターの副センター長を務め、2018年には岐阜大学 地域連携スマート金型技術研究センター(以下、金型技術研究センター)の副センター長となった。 2021年4月からはクロスアポイントメント制度を活用して島根大学 次世代たたら協創センター教授にも就任、強連成サイバーフィジカルシステム(CPS)に基づく金属成形プロセスの自動最適化の研究を行っている。また、同年10月からは岐阜大学が定めた民間企業等から一定額以上の資金(共同研究・受託研究など)を受け入れた教員に与えられる特別な称号「産学連携教授」に任命された。2022年4月には工学部機械工学科の教授、金型技術研究センターのセンター長に昇任し、新たにスマート金型・スマート生産技術を担う研究室を立ち上げた。ものづくり研究への体制を強化し企業等との連携に力を入れる。せん断加工プロセスの自動最適化技術の開発 今回の研究テーマは「強連成サイバーフィジカルシステムに基づくせん断加工プロセスの自動最適化技術の開発」。 塑性加工の加工プロセスには適切な潤滑、温度、摩耗、工具配置の管理などが必要であり、操業条件のパラメーターは多岐にわたる。これらの判断には作業者の経験やカンコツ(暗黙知)に頼る部分が大きいため、時間をかけた技術伝承が行われてきた。しかし、作業の標準化(形式知化)は容易ではないうえ、昨今の加工技術の多様化や複雑化、若手技術者の減少などの要因が重なり、重要な課題となっている。このような状況を打破するためには、経験や技能を定量化およびデジタル化する手法を開発し、これまでに培ってきた有用かつ高度な技術を集積したアーカイブシステムを構築し、広く利用されるようにすることが重要である。 本研究では鋼材の平面ひずみせん断加工を研究対象とし、AIとせん断金型、サーボプレスが連携して最適打抜き条件を自動的に決定するせん断加工プロセスの自動最適化技術の構築を最終目的とする。また、最適化の中で蓄積される加工条件と加工品質のビッグデータから両者の関係を分析し、暗黙知を形式知に置き換える試みを行う。目的実現のための3つの研究課題 これらの目的を実現するため、本研究では①せん断加工その場観察と画像解析によるせん断加工品質の自動評価、②強連成サイバーフィジカルシステムに基づくせん断加工プロセスの自動最適化、③感度分析を用いたせん断加工ナレッジアーカイブの構築――の3点を研究課題に設定している。 サイバーフィジカルシステムとは、現実空間の情報をコンピュータによる仮想空間に導入し、分析・評価したあとフィードバックし、現実空間において最適な結果を導き出すシステムである。本研究では、AIからの指示に従って金型が自動で微調整を行い、サーボプレスが動作設定を自己調整して自動的にせん断実験を行う。その際にCCDカメラが加工プロセスを録画し、画像解析によって加工品質(だれ、せん製造現場の課題を解消する自動最適化技術を構築強連成サイバーフィジカルシステムを活用し、せん断加工プロセスを自動最適化

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