❶❶❷❷奈良崎愛子研究グループ長(左)とDaniela研究員(右)❸❸❶❷本研究で使用するフェムト秒タンパク質レーザー描画装置/❸タンパク質で描画された産業技術総合研究所のロゴマーク。非常に小さいサイズながらクリアに描画されているションが可能な多様な原料を利用できること』です。従来法として、生物医学分野で確立された手法がありますが、高いスキルと製造日数を必要とするため、そのスケールアップは難しいといわれています。最近では、その代替アプローチとしてマイクロ流体または電子マイクロデバイスを利用した手法が開発されていますが、これらは従来法と比較して、リポソームの均質性に欠けるうえ、特定の脂質に限定されるケースが多く、いまだ生産性が高いとはいえません」。 「そこで本研究では、将来的なバイオマテリアル応用の普及に先駆けて、工業生産に必要とされる高い生産性・信頼性・安全性に重きをおいてリポソームを主ターゲットに、多様で均質な脂質-タンパク質構造のハイスループット生産を可能とする、革新的レーザープロセッシング技術の開発を目指しています」。リーダー、産総研の奈良崎愛子研究グループ長にはとても感謝しています。産総研に来てまだ1年ですが、多くのサポートをしていただいています」と周囲への感謝を忘れない。13レーザーの魅力を活かしバイオや医療の高度化に貢献する 今回の取材はDaniela研究員の上司にあたる奈良崎愛子研究グループ長も同席された。取材中、アイコンタクトをしながら話す2人の姿に深い信頼関係を感じた。 奈良崎グループ長は「バイオや医療分野には、レーザーの魅力を活かし、社会課題解決に貢献できる多くの研究開発テーマがあると考え、彼女には『ぜひ産総研に』と声をかけました。当初は任期後に審査のあるテニュアトラック型(博士型)任期付研究員制度での採用でしたが、産総研では最近、若手研究者支援の目的で任期がなくなったため、彼女も常勤職員となりました。安心して、新しいことにもどんどん挑戦してもらいたいと思っています」。 「天田財団の助成は他の助成と比べて非常に自由度が高く、挑戦的なことをするにはとても良い助成なので今回、彼女に勧めました。スループットが必要とされる大型プロジェクトへの架け橋にもなる若手や中堅の研究者にもありがたい助成だと思います」と語っている。 Daniela研究員は「今までお世話になってきた東京大学の藤田博之先生、竹内昌治先生、理研の杉岡幸次チーム効率的でパーソナライズされた 環境に優しいデバイスをつくる Daniela研究員は東京に在住し、公共交通機関を使って通勤している。歌舞伎や祭り、神社など日本の文化が好きなので神社も多く、交通の便が良い都内に住むことにしたのだという。週に1回通っている和太鼓のクラブは生徒の半数が外国人。アットホームな雰囲気で寂しく感じることもないのだと笑顔で話してくれた。オンとオフを切り替え、そのどちらにも全力で取り組む彼女の真面目さが垣間見えた。 「私はバイオロジカルデザインを利用して、効率的でパーソナライズされた環境に優しいデバイスをつくりたいと考えています。レーザーと3Dプリンティングは今後を語るうえで欠かせない技術だと思っています。非侵襲性で空間的・時間的にコントロールできるレーザー光は、社会のさまざまな場面で必要不可欠なツールになるはずです。また、将来的には宇宙などさまざまな環境において、部品を輸送するのではなく、必要な場所で新しい部品をつくることができる3Dプリンターが不可欠になると考えています」とDaniela研究員は今後の展望について語っている。
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