天田財団ニュース No12
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産業技術総合研究所・Daniela SERIEN研究員直接描画によるタンパク質微細構造作製に関する研究」で博士(情報理工学)を取得した。2015年10月〜2016年4月には同大学 生産技術研究所で特任助教として、細胞培養のためのレーザー直接描画によるタンパク質微細構造作製を研究。2016年5月〜2021年3月には理化学研究所(以下、理研) 光量子工学研究センター 先端レーザー加工研究チーム(杉岡幸次チームリーダー)の基礎科学特別研究員として、フェムト秒レーザー直接描画によるタンパク質微小3次元構造体の造形の研究を行った。 2021年4月からは産業技術総合研究所(以下、産総研) 電子光基礎技術研究部門 先進レーザープロセスグループの研究員として、次世代診断・治療など将来のバイオ・医療に資する多様なバイオ材料3次元描画のためのハイブリッドレーザー加工技術開発に関する研究を行っている。12研究室訪問5産業技術総合研究所電子光基礎技術研究部門Daniela SERIEN 研究員レーザーを活用した最先端の生物物理学の研究 産業技術総合研究所 電子光基礎技術研究部門のDaniela SERIEN研究員の研究テーマが、天田財団の2021年度「重点研究開発助成(課題研究)」のレーザプロセッシング分野に採択された。 Daniela研究員はドイツ・ベルリン出身。小さい頃から動物が好きで、将来は獣医師になる夢を持っていたという。数学が得意だったことから、2006年にフンボルト大学ベルリンに入学。生物の遺伝現象や神経、筋肉などの生理機能を物理学的手段により分子レベルにまで解析し、その機構を基本的・統一的に理解しようとする総合科学、生物物理学を専攻し、タンパク質・脂質検出方法、PCR法、細胞培養などの研究を行った。2010年夏には大学とアルバイトの休みを2カ月間取り、ボランティアで日本を訪れた。その際、日本の文化や伝統に魅力を感じ、2011年に東京大学大学院 総合文化研究科・教養学部へ留学することを決めた。 留学を目前に控えた3月、東日本大震災が発生、福島第一原発がメルトダウンした。しかしドイツでニュースや発表されている放射能汚染の統計データなどの情報を収集、留学先の藤田博之先生とも相談し留学を決断した。 2012年10月に東京大学大学院 情報工学研究科に入学し、翌年には博士後期課程に進学。2015年には「レーザー均質なリポソームをハイスループット生産 今回、重要研究開発助成に採択された研究テーマは「均質な脂質-タンパク質構造のハイスループット生産に向けたフェムト秒レーザープロセス開発」。Daniela研究員は今回の研究目的について次のように話している。 「グローバリゼーションが進む社会において、新型コロナウイルスなどの新たな病原体が大きな脅威となり、迅速かつ精確な診断法・治療法の開発の重要性が再認識されています。また、健康長寿社会の実現に向けて、必要な薬物や栄養素を必要なときに、必要な疾患部位に届けることができるドラッグデリバリーシステム(DDS)は、人々のQOLを向上させる優れた治療・健康増進手法として研究開発が進められています」。 「これらの疾患研究やDDSの発展を支える重要な物質に、脂質二重層とタンパク質からなる『リポソーム』があります。リポソームを製造する課題は3つ――『物理化学特性のわずかな差が有効性や安全性に影響をおよぼす可能性があるためサイズ均一性が求められること』『残留溶媒や菌を徹底的に排除できる汚染フリー・無菌化プロセスであること』『ハイスループットかつ患者に合わせたカスタマイゼーバイオマテリアル応用に資する革新的レーザープロセスの開発均質な脂質-タンパク質構造のハイスループット生産を目指して

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