天田財団ニュース No11
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❶❶❷❷富田研究室・岡田研究室の集合写真。前列左が富田准教授、右が岡田達也教授❸❸❶顕微光学系を用いたレーザ照射/❷光路調整/❸助成金でバージョンアップしたフェムト秒レーザ装置 ハイエントロピー合金のレーザ照射による創成には多種材料の検討を短時間で一気に行う必要がある。そのため、本研究では多成分でさまざまな組み合わせを試すのが一番早道と考え、それを可能にするためにコンビナトリアル手法を活用する。力学的緩和経路を制御できることを明らかにしてきた。 また、フェムト秒レーザ照射による新奇物質相の生成に関する研究では、結晶欠陥の電子顕微鏡観察を行っている岡田教授と長年にわたって共同研究を行っている。 特に天田財団の平成25年度「一般研究開発助成」に採択された「レーザーアニール法によるシリコンカーバイドへの金属電極の形成」、文部科学省の平成29年度科学研究費補助金「基盤研究B」に採択された「フェムト秒レーザ光照射によるワイドバンドギャップ半導体と金属界面の非熱的合金化」などでは、ワイドバンドギャップ半導体と金属の界面でのフェムト秒レーザ光照射によって誘起される反応を研究してきた。その結果、GaN基板と金属が反応しないことからGaN基板を窓材として利用する今回の助成研究に結びついた。92017年4月に現職に 富田准教授は徳島県出身で、1997年3月に京都大学 工学部物理工学科(機械系学科)を卒業。1999年3月に東京大学大学院 理学系研究科物理学専攻 修士課程、2002年3月に博士課程を修了し、博士(理学)を取得した。 同年4月に東北大学 多元物質科学研究所の助手、2004年4月に徳島大学大学院 工学研究科 エコシステム工学専攻の助手。2006年4月に同大学院 ソシオテクノサイエンス研究部の助手、2007年4月に同研究部の助教、2013年11月に准教授に就任。2016年4月に同大学大学院理工学研究部の准教授、2017年4月に同大学院 社会産業理工学研究部の准教授に就任、現在に至っている。 今回の研究の共同研究者の井澤准教授は高校の同窓生、山口准教授は大学院の研究室での先輩にあたる。これまでの実験結果が今回の研究に結びつく 富田准教授は、物質に光を照射した際に生じる緩和過程に興味を持ち、その緩和過程から新たな構造形成を引き出すことを目指している。そのため、軟X線をプローブ光として用い、金属材料のアブレーションダイナミクスを議論した。 文部科学省の平成24年度科学研究費補助金「新学術領域研究(研究領域提案型)」に採択された「フェムト秒レーザー光励起プラズマによるナノ構造の自発的形成」や、平成25年度科学研究費補助金「基盤研究B」に採択された「コヒーレント軟X線を用いた高空間・高時間分解顕微干渉イメージングシステムの開発」などの研究は、今回の研究の礎となるものである。これらの研究は金属を対象とし、軟X線を用いた干渉およびシャドウグラフの観測によって、フェムト秒レーザ特有の非熱的加工について観測を行ってきた。そしてフェムト秒レーザ照射強度の変化で金属の熱助成で新たなフェムト秒レーザ装置を購入 富田准教授は「今回いただいた助成金で長年使用していたフェムト秒レーザ装置のバージョンアップができました。科研費の審査も年々きびしくなっていると言わざるを得ません。『長期的』な視野をもって、面白いと思える研究よりも、『すぐ』に役に立つ研究を求められる傾向があると感じています。われわれが行っているような未知数の研究でもしっかりと支援してくれる天田財団の研究助成は、研究者にとって大変ありがたい支援です」と感謝の言葉を述べた。

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