天田財団ニュース No11
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東北大学 金属材料研究所・北條智彦助教柿沼洋博士研究員、廣本祥子客員教授、Amar Prasad Yadav客員教授、博士後期課程の学生が6名、博士前期課程が8名、学部4年が4名、秘書が1名の計26名が在籍している。 秋山研究室では建築・土木、自動車や原子力材料などに用いられる構造材料に侵入した微量水素が引き起こす水素脆化について、水素が金属組織内でおよぼす役割や、腐食反応による水素侵入挙動を解明する研究を行っている。材料の安心・安全のため、それらを踏まえた水素脆化特性評価法開発と、耐環境特性に優れた材料の開発に取り組んでいる。また、廃炉措置に向けた原子力発電所設備の特殊環境での腐食問題にも取り組んでいる。6研究室訪問2東北大学 金属材料研究所耐環境材料学研究部門北條 智彦 助教長野工業高専から信州大工学部で学位取得 東北大学 金属材料研究所 耐環境材料学研究部門の北條智彦助教は、天田財団の2020年度の「重点研究開発助成(課題研究)」に塑性加工分野で採択された。 北條助教は1999年3月、長野工業高等専門学校 機械工学科を卒業。同年4月に信州大学 工学部 生産システム工学科へ入学し、2001年3月に卒業。2003年3月には同大学大学院 工学系研究科 生産システム工学専攻 博士前期課程、2006年3月に博士後期課程を修了し、博士(工学)の学位を取得した。 そして、2006年4月から2011年3月までは津山工業高等専門学校 機械工学科の助手と助教、2011年4月から2013年8月までは同講師に就任。また、2009年11月から1年間は、英国・ケンブリッジ大学に研究留学した。その後、2013年9月から2016年12月までは岩手大学 工学部 機械システム工学科の助教を務め、2016年12月からは東北大学 金属材料研究所 耐環境材料学研究部門の助教に就任、現在に至っている。金属材料の水素脆化や腐食問題に取り組む 北條助教が所属している秋山研究室は、秋山英二教授を中心に、小山元道准教授、北條助教、味戸沙耶助教、水素脆化の発生を抑制する超高強度鋼板の開発 北條助教は、構造部材として自動車に組み込まれて使用される超高強度鋼板をはじめとした、各種材料の水素脆化の機構を解明し、水素脆化特性の評価方法を確立、機械的特性に優れた金属材料――特に水素脆化の発生を抑制する超高強度鋼板の開発などを行っている。 今回、重点研究に採択された「プレス成形した超高強度低合金TRIP鋼の遅れ破壊特性評価技術の確立」では、以下の背景に即した研究を実施している。 自動車の軽量化と安全性を担保する強度を得るため、自動車用構造部材として、冷間プレス材で引張強さが1180MPa級、ホットプレス材で1470MPa級および1800MPa級の超高強度鋼板の適用がはじまっている。一般に980MPaを超える高強度鋼材は、鋼中に侵入した水素によって遅れ破壊が発生することが知られており、橋梁用のボルト材では遅れ破壊メカニズムや耐遅れ破壊特性に優れた鋼材の開発に関する研究も積極的に行われている。 自動車用構造部材も将来的には1470MPa級の冷間プレス用超高強度鋼板が積極的に適用されることが予測されている。自動車用鋼板はプレス成形後に構造部材として使用されるため、塑性ひずみ付与後に定荷重が付加された状態で使用されることを想定して、遅れ破壊特性を評価超高強度低合金TRIP鋼の遅れ破壊特性評価技術の確立低コスト化・高付加価値化を目指す超高強度鋼板の

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