天田財団ニュース No11
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広島大学・荒川仁太特任助教業人材を育成する拠点として2019年2月に設立した。大学をはじめとする地域の力を活用して、ものづくりのバリューチェーン全体のデジタル化を目指している。 同センターの特徴は、アンダーワンルーフで社会実装に向けた研究開発に取り組んでいることで、これまで多くの企業の参画を得て活動してきた。今後は、テストベッド(研究開発・実証を支援する検証プラットフォーム)構築や学位プログラム「スマートイノベーションプログラム」との連携も進めていく計画だ。14研究室訪問6広島大学 デジタルものづくり教育研究センター荒川 仁太 特任助教2020年4月から現職に 広島大学 デジタルものづくり教育研究センターの荒川仁太特任助教は、天田財団の2020年度の「奨励研究助成(若手研究者枠)」のレーザプロセッシング分野に「レーザパターニング表面処理による高耐久性能を実現する接着接合接手の開発」という研究テーマで採択された。 荒川特任助教は2015年3月に広島大学大学院 博士前期課程を修了したあと、2年ほど民間企業で勤務し、2017年4月に再入学、2020年3月に同博士後期課程を修了。超音波ショットピーニングがステンレス鋳鋼の疲労強度におよぼす影響や、金属材料の微小疲労き裂発生および進展のメカニズムに関しての研究などを行い、博士(工学)の学位を取得した。 2020年4月からは広島大学 デジタルものづくり教育研究センターの特任助教に就任。ガラス繊維配合のプラスチックおよびゴム材料のスーパーエラストマーの疲労強度に関する研究を行っている。社会実装に向けた研究開発と人材育成の拠点 デジタルものづくり教育研究センターは、「ひろしまものづくりデジタルイノベーション」創出事業のもとで広島大学と産業界が連携し、社会実装に向けた研究開発活動と高度産MBRで材料開発を効率的に推進する 荒川特任助教は、同センターの材料モデルベースリサーチ(MBR)部門に所属。モデルベース開発の考え方を材料の研究領域まで展開し、「ニーズからのバックキャスティング」と「モデルによる産学官連携」により効率的に革新的価値を生み出すための研究に取り組んでいる。 MBRについてMBR部門部門長の大下浄治教授は次のように語っている。 「広島地域では、マツダ㈱がシミュレーションを駆使して効率的な開発を行う『モデルベース開発(MBD)』を導入し、高効率エンジンを開発するなどの成果を挙げています。また、広島大学がマツダやコベルコ建機㈱とMBDに関する共同研究講座・研究所を学内に設置するなど、デジタルものづくりに取り組む素地(先行優位性)がありました」。 「MBR部門はモデルをベースにした研究開発を産学官の緊密な連携のもとに推進しています。実験によって積み重ねられた大量のデータを解析して材料の高性能・高機能化をはかっていくのが材料開発の一般的なプロセスですが、当部門では、原理原則に基づいた材料の機能と工法のメカニズム解明を行い、それに基づいたシミュレーションなどのモデルを活用して、質の良い最小限のデータから材料開発を効率的に進める新しい取り組みを行っています。参画企業・機関の皆さまとともに社会的実装に向けて共創してモデル化技術に関する研究開発を進めています。全体計画として熱マネNVHをリードモデルとし、そのアプローチ産業界のニーズに応えつつ、物事の原理原則を追究するレーザパターニング表面処理により接着強度の向上を目指す

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