天田財団ニュース No11
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❶❶❶熱電特性評価装置/❷放電プラズマ焼結装置❷❷材料工学研究室の集合写真。後列中央から右に陳中春教授、音田哲彦准教授、衣助教構造および強化機構、組織制御の指針を提案する。 研究成果としては、熱間押出しに生じる大きなせん断変形により、黒鉛を押出し方向に配向させ、押出し方向における熱伝導率の向上および熱膨張係数の低減を同時に実現することが期待できる。また、熱間押出し加工における黒鉛の変形挙動、黒鉛のキンク形態・構造および強化機構、複合材料の微視組織や黒鉛の配向性の制御、熱伝導率や熱膨張係数の異方性などに関する研究は学術的にも大きな意義があると考えられる。 黒鉛は原料として安価で、複合材料の創製プロセスも簡単である。しかも押出しプロセスは大量生産に向く技術であり、将来は量産化も可能になると考えられる。 産業用途としては、半導体素子や自動車分野などにおける放熱材料としての応用が期待でき、波及効果も大きいと考えられることから、奨励研究助成として採択された。13博士後期課程から取り組んだテーマ そこで衣助教は博士後期課程に進学後、Al/黒鉛複合材料の塑性加工技術の開発に取り組んだ。黒鉛は層状結晶構造を有するので、3次元圧縮応力(静水圧)と、せん断変形を与えることができる押出し技術は、黒鉛の配向化および集合組織の発達に寄与することが可能となる。そのため、衣助教はAl/黒鉛混合粉末の熱間押出し成形の可能性を検討した。そして一連の実験結果から、熱間押出し加工によって黒鉛を押出し方向に配向させることに成功するとともに、緻密・健全かつミルフィーユ構造のAl/黒鉛複合材料を創成できることを確認した。 また、得られた複合材料が押出し方向に高い熱伝導率、低い熱膨張係数および高い圧縮強度を示し、複合材料に熱的・機械的性質の異方性を有することも明らかにした。 しかし、Al/黒鉛複合材料の強度や熱伝導率・熱膨張係数におよぼす原料粉末の性質、複合材料の組成、Al-Si合金の添加、押出し条件など諸因子の影響はまだ完全には解明されておらず、黒鉛のキンク形態・構造および強化機構、組織制御に関してもまだ不明な点が多い。Al/黒鉛複合材料をヒートシンクに活用 そこで本研究では、炭素系ナノファイバーよりはるかに安価で分散しやすい黒鉛を第2相として用い、軽量かつ高い熱伝導率を有し、耐食性や加工性、リサイクル性の良いAlをマトリックスとした高強度・高熱伝導率・低熱膨張係数を兼ね備えたAl/黒鉛複合材料の開発を目指す。 天然黒鉛、Al粉末、Al-Si合金粉末を出発原料として用いて、熱間押出し加工によって、高密度のキンクを導入するとともに、黒鉛を押出し方向に配向させ、Al/黒鉛混合粉末の緻密化と成形を同時に実現する。 また、Al/黒鉛複合材料の強度や熱伝導率・熱膨張係数におよぼす原料粉末の粒径、黒鉛の添加量、Al-Si合金粉末の添加量および、Siの含有量、押出し条件などの影響も系統的に調べ、最適な材料特性を引き出すための複合材料の組成設計、プロセッシング条件、黒鉛のキンク形態・鳥取は第二の故郷 衣助教は今年で30歳。鳥取に来て8年、今では鳥取を第二の故郷と考えているという。 「自然環境が豊かでフレンドリーな人も多く、とても住みやすいところだと思っています。これからも鳥取大学で研究を続けていきたい」と語っていた。

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